九九につまずいた“先”が大切|発達特性のある子に必要なサポートと家庭の向き合い方
公開日:2025/09/03 更新日:2026/06/03九九がなかなか覚えられない——そんな子どもの姿に、不安を感じたことはありませんか?
実は、その“つまずき”の裏には、見えづらい発達特性が関係していることも。
本記事では、九九で悩む小学生の背景にある可能性や、親ができるサポート、支援の考え方をやさしく解説します。
「九九がなかなか覚えられない」
——そんなわが子の様子に、焦ったり、つい怒ってしまったりしたことはありませんか?
ですが実は、それは“やる気の問題”ではないかもしれません。
小学校1〜2年で学ぶ九九につまずく子どもたちのなかには、脳の「情報処理の特性」が関係しているケースもあります。目に見えにくいだけで、「がんばっているのにうまく覚えられない」ことにはちゃんと理由があるのです。
まずは「できないのは、努力が足りないからじゃない」と知ることから始めましょう。
▪️なぜ九九でつまずくの?
九九は小学校2年生の重要な単元です。特に「記憶」と「反復」が求められるため、勉強に慣れていない子どもにとっては大きなハードルになります。
その中でも、以下のような「情報処理の特性」を持つ子は、特につまずきやすい傾向があります。
・ワーキングメモリ(作業記憶)の弱さ
・聴覚情報の処理の苦手さ
・順序を保って記憶することの難しさ
これらはすべて、発達障害やグレーゾーンの子どもに多く見られる特性です。
▪️見えにくい“情報処理の個性”
九九を覚えるには、「音で聞いた情報を記憶にとどめる」力と、「順番通りに唱える力」が必要です。
しかし、次のような状態にある子どもは、このプロセスで困難を感じやすいです。
・「3×4」「5×7」といった数の組み合わせが頭に入りにくい
・音で聞いた内容をすぐに忘れてしまう
・聞いた内容の順番を混乱してしまう
親や先生が「何度も言ってるのに…」と感じてしまう背景には、一時的な記憶を保つ「ワーキングメモリ」の容量が小さいといった脳の特性が関係していることがあります。
▪️発達特性は“目に見えない困りごと”
このような困難は、日常では見過ごされやすいのが現実です。
特にグレーゾーンや診断を受けていない子どもは、「ちょっと不器用」「集中力がない」と誤解されがちです。
以下のような特徴がある場合は、発達特性が関係している可能性も考えられます。
・書いたり読んだりはできるのに、記憶の反復が苦手
・集団行動の中でのペースに乗りにくい
・質問に答えるのに時間がかかる
こうしたサインは、発達障害グレーゾーン小学生の特徴として、近年多く報告されています。
第2章:発達がゆっくりな子の九九の壁
九九をなかなか覚えられない――
そんな子どもの様子を見て、「うちの子だけ?」と不安になることはありませんか?
実は、ADHD(注意欠如・多動症)やLD(学習障害)など、発達特性を持つ子どもにとって、九九は特につまずきやすい単元です。
診断の有無にかかわらず、「うっかり」「集中が続かない」「順序を覚えるのが苦手」といった特徴は、日常の中にひそかに現れます。
中でも、女の子は「周囲に合わせようと頑張る」あまり、その困難が見逃されやすいのです。
この章では、発達障害やグレーゾーンの子に見られる特徴を具体例とともに紹介し、早期に気づくためのヒントをお伝えします。
▪️うっかり・集中できない・順序が苦手
九九の学習には、「音で聞いた情報を覚える」「順番に唱える」「何度も繰り返す」といったスキルが求められます。
しかし、以下のような特徴を持つ子は、これらがうまくかみ合わず、つまずきやすくなります。
・気が散りやすく、集中が続かない
・数字や順番をすぐに忘れてしまう
・一度に複数の情報を処理するのが苦手
・暗唱しているうちに順序が飛んでしまう
これらはADHDやLDの傾向を持つ子どもたちによく見られる特徴で、診断されていないグレーゾーンの子でも多く該当します。
▪️グレーゾーンの子に見られる特徴とは?
「発達障害のグレーゾーン」とは、医学的な診断基準を満たすほどではないけれど、日常生活や学習に困難さを抱えている状態です。
グレーゾーンの子に共通する九九での困りごとには、以下のようなものがあります。
・数唱の途中で別のことを考えてしまう
・3×4=12のように“数の関係”がつかめず、丸暗記になりやすい
・繰り返しの練習を嫌がる
・「何回もやってるのに覚えられない」と自己否定感が強まる
「九九=覚えるもの」と思われがちですが、記憶の仕組みや集中力のクセによって、習得に時間がかかる子もいるのです。
▪️女の子に多い“気づかれにくい困難”
発達特性のある女の子は、「困っているのに気づかれにくい」ケースが少なくありません。
・授業中は静かにしていて注意されない
・周囲に合わせようと努力しすぎて疲れている
・苦手を隠して無理にがんばる
こうした特性の背景には、社会性が高く、我慢強い性格傾向があります。
「うちの子はどうだろう?」と思ったら、以下のような行動がないかをチェックしてみてください(参考:発達障害 子供 チェックリスト 10歳対象の指標より一部抜粋)。
・音読が苦手でつまずくことが多い
・忘れ物や「やるべきこと」を忘れがち
・気がつくとボーッとしていることが多い
・「今やっていたこと」をすぐ忘れてしまう
・順番に何かをするのが苦手
・口頭での指示を理解するのに時間がかかる
・同じミスを何度も繰り返す
・苦手なことになるとすぐに手が止まる
これらは、九九に限らず「学習の壁」に直面しやすい子どもの特徴です。
▪️「気づくこと」がサポートのはじまり
発達障害やそのグレーゾーンの特徴は、本人も周囲も「気づきにくい」のが大きな特徴です。
九九を覚えられないことが続くと、子どもは「自分はダメだ」と感じてしまい、勉強そのものが嫌いになってしまうこともあります。
だからこそ大切なのは、子どもの行動や反応に“違和感”を覚えたときに、それを否定せず受け止めることです。
「できない」には必ず理由があります。次章では、その“理由”に合わせたサポートの工夫を詳しく解説していきます。
「九九がなかなか覚えられない」「何度練習しても身につかない」
――そんな姿を見て、「もしかして発達障害?」と不安に思う保護者の方も多いでしょう。
でも、すぐに診断を受けることが正解とは限りません。まずは、その子の感じ方・学び方に合わせた“支援”から始めることが大切です。
この章では、診断の有無にかかわらず、今日から家庭で取り入れられるサポート方法をご紹介します。「できるようになる」を急ぐより、「安心してチャレンジできる」環境づくりにシフトすることで、子どもは少しずつ自信を育んでいきます。
▪️スモールステップと繰り返しの力
発達特性のある子には、「一気に全部」覚えるのがとても難しいことがあります。九九を一気に9の段まで丸暗記するのは、大人が思うよりずっと大きな負担です。
そこで効果的なのが、「スモールステップ」と「繰り返し」です。
・まずは1の段から。「1×1」「1×2」…を“1日1つ”のペースでゆっくり
・言えるようになったら、“声に出す→聞く→書く”の順で定着
・「3×4=12」だけでなく「12=3×4」と逆パターンでも言ってみる
・前の段に戻って復習する「らせん式」がおすすめ
スモールステップで着実に、「できた!」という小さな成功体験を積み重ねることが、やる気と記憶の定着につながります。
▪️感覚タイプ別に合わせた学習法を
子どもには「視覚優位」「聴覚優位」「身体感覚優位」といった情報処理の得意・不得意があります。九九の学習でも、その子に合った方法を取り入れることで、理解や定着のスピードが大きく変わります。
◉ 視覚優位タイプ
・数字カードやカラフルな九九表を活用
・ノートに色分けして書く
・動画やアニメで九九を視覚的に見せる
◉ 聴覚優位タイプ
・リズムや歌で覚える(例:「九九のうたCD」「怪盗ねこぴー」など)
・親の声やアプリでの読み上げを繰り返し聞かせる
・自分の声を録音して聞いてみる
◉ 身体感覚優位タイプ
・手をたたきながらリズムに乗せて暗唱
・ステップを踏みながら言うなど、身体を使って記憶
・お風呂やベランダなど“動きながら”学ぶ場面を作る
「うちの子はどのタイプかな?」と観察しながら、感覚に合った方法を試してみることが効果的です。
「もしかしてうちの子、九九が苦手かも?」と感じたとき、すぐに専門的な支援につなげるのは難しいこともあります。でも、家庭の中で取り入れられる“ちょっとした工夫”がいくつもあることをご存じでしょうか。
この章では「これならやってみようかな」と思えるような、小さくてやさしいサポート例をいくつかご紹介します。
● タイマー学習
「よし、今から30分がんばろう!」は、多くの子にとってハードルが高すぎます。
代わりに、キッチンタイマーを使って「5分だけやってみよう」→「ちょっと休憩」→「また5分だけ」というリズムを作ってみてください。
タイマーの「ピピッ」という音が一区切りのサインになり、気持ちの切り替えにも役立ちます。
● 九九ビンゴやすごろく
九九の練習を、机に向かって黙々と書くだけでは飽きてしまう子も多いもの。
そんなときは、「ビンゴゲーム」「すごろく」「かるた」などを使って遊びながら覚える工夫を取り入れてみましょう。
声に出して答える、親子で競い合う、ちょっとした勝ち負けがある——そうした要素が加わると、子どもは夢中になって取り組むことができます。
● 声かけの一貫性と前向きな言葉
毎日の声かけも、子どもの自信に大きく影響します。
つい「なんでまだ覚えてないの?」と焦ってしまう気持ちもわかりますが、そこをぐっとこらえて、「できないんじゃなくて、今はまだ練習中だね」「ここまでよく頑張ってるね」と前向きな言葉に変えてみてください。
大切なのは、“結果”より“取り組んでいること”を認める姿勢です。
● 九九表を生活の中に
学習は、必ずしも机の前だけで行うものではありません。
トイレの壁、冷蔵庫、玄関のドアなど、日常の中でふと目に入る場所に「九九表」や「ヒントカード」を貼っておくと、自然に目に入り、無理なく記憶に残っていきます。
● ごほうびシールで“見える化”
小さな達成も「見える化」すると、子ども自身が「がんばってるな」と実感できます。
例えば、1つの段を言えたらカレンダーにシールを貼る、好きな色のスタンプを押す、などの“ごほうび可視化”はモチベーションの維持にも効果的です。
親が「うまくやらなきゃ」と思いすぎる必要はありません。
「一緒にやってみよう」という気持ちが、子どもにとってなによりの支えになります。
「まだ覚えられないね」「なんでできないの?」ではなく、「ここまでよく頑張ったね」「昨日よりスムーズだったよ」といった成長に注目した声かけが、子どもの自信を育てます。
▶︎ 声かけのポイント:
・「〇の段、あと2つで終わるね!」など、残りのステップに目を向ける
・「お母さんはあなたのペースで大丈夫って思ってるよ」など、安心感を伝える
・「今日は3回も口に出して読めたね」など、結果よりプロセスをほめる
こうした関わりを続けることで、子どもは「できるようになる自分」に目を向けられるようになります。
▪️診断がすべてではない
発達障害の疑いがあるかも…と心配する保護者の方もいるかもしれません。でも、「診断がついたから支援できる」のではなく、“困っているサイン”に気づいたときがサポートのはじまりです。
・診断の有無に関係なく、配慮や工夫はすぐに始められる
・「家庭で安心して学べる場」が、子どもの力を引き出す
・できることを少しずつ増やし、成功体験を積み重ねることが最優先
次章では、学校や先生と連携しながら、家庭と社会全体で支える視点についてご紹介します。
子どもが九九をなかなか覚えられないとき、「家庭だけでどうにかしなきゃ」と思い詰めてしまう保護者は少なくありません。でも、実は周囲に頼ることで、子どもの未来がより豊かになることも多いのです。
この章では、「誰に、どう相談すればいいの?」「遅れてしまっても大丈夫?」そんな不安に丁寧に寄り添いながら、具体的なサポートの受け方をご紹介します。
▪️学校の先生との連携が、子どもを支える第一歩
まず大切なのは、「九九が覚えられない」という困りごとを、学校の先生と共有することです。
「うちの子だけが遅れてるのでは…」「先生に迷惑をかけてしまうかも」と感じるかもしれませんが、学校は“支援の場”でもあります。
● 連絡帳を活用する
・家庭での様子(どの段でつまずいているか/どんな練習をしているか)を書く
・「どこまでできるようになったか」「どこでつまずいているか」の情報共有
● 面談や相談日を活用する
・担任だけでなく、特別支援コーディネーターの先生がいる場合は相談を
・「診断はないけれど、少し気になることがある」と伝えてもOK
●「合理的配慮」の相談も可能
・必ずしも診断が必要なわけではない
・たとえば、九九の小テストを口頭で代替、時間を延ばすなど柔軟な対応も可能
先生は“評価者”ではなく、子どもを支えるパートナーです。
困りごとがあれば、できるだけ早く共有し、一緒に考える姿勢が大切です。
▪️支援機関や医療機関を“使うこと”への抵抗感を手放す
「発達支援センター」や「児童精神科」と聞くと、少しハードルが高く感じるかもしれません。でも、実際には「相談だけでもOK」「診断をつけずにアドバイスを受けるだけでも大丈夫」な場所もたくさんあります。
● 発達支援センターの役割
・保護者の相談にのってくれる
・学校と連携して、子どもへの支援方法を一緒に考えてくれる
● 医療機関(児童精神科・小児科)でできること
・発達検査や行動観察により、客観的な「子どもの特性」を知る手がかりが得られる
・「診断がつく=レッテル」ではなく、「適切な支援を受けるパスポート」になることもある
支援機関に行くことは、「親として失敗した証」ではありません。
むしろ、より良い環境を整えようとする“前向きな選択”です。
誰にも相談できず、「どうしてうちの子だけ…」と自分を責めてしまう保護者の方も少なくありません。でも、同じような悩みを持つ保護者との出会いは、言葉にできなかった思いを共有できる貴重な機会になります。
● おすすめの相談先やつながり方
・自治体の「子育て支援センター」や「発達相談窓口」
・発達特性のある子の保護者の会やLINEグループ
・SNSやブログで情報発信している“先輩ママ・パパ”のコミュニティ
「うちも同じでした」「この教材がよかったよ」など、具体的なヒントや共感の言葉に救われることも多いはずです。
▪️子どもを守るのは、親の“自己肯定感”と“情報との出会い”
子どもがつまずいたとき、いちばん必要なのは、親自身が「大丈夫」と思える気持ちです。
「焦らなくていい」「うちの子にはうちの子のペースがある」と心から思えるようになると、子どもにもその安心感は伝わります。
そして、そのために必要なのが、正しい情報との出会いです。
・発達に関する基礎知識を学ぶ(本、信頼できるWebサイトなど)
・教育や心理の専門家のコラムや動画を見る
・「診断ありきではなく、支援ありき」の考え方に触れる
困ったときこそ、知ることが力になります。
親が安心することで、子どもにとって「安全基地」になれるのです。
▪️“ひとりで抱えない”ことが、いちばんの支援
九九が覚えられない、発達特性かもしれない…
そうした悩みを、「家の中だけでなんとかしよう」とがんばりすぎないでください。
・学校の先生に相談する
・支援機関を活用する
・仲間とつながる
・自分を責めすぎない
これらの行動が、「支援の輪」を少しずつ広げ、子どもが安心して学べる土台になります。
支援は早すぎても遅すぎてもいけない、ということはありません。
気づいたときがベストタイミングです。
九九をなかなか覚えられない。
つい昨日まで元気だった子どもが、プリントの前で顔を曇らせる。そんな姿を見て、「なぜうちの子だけ……」と悩んでいる保護者の方もいるかもしれません。
でも、九九につまずくことは、決して“特別なこと”ではありません。
特にワーキングメモリや順序記憶、聴覚処理の苦手さなど、情報の受け取り方や整理の特性が背景にあることも多く、それは努力不足ではなく“脳のクセ”にすぎません。
さらに、発達障害やグレーゾーンの子どもたちの中には、見えにくい困難を抱えているケースも多くあります。女の子の場合は「手がかからない子」として見過ごされがちで、困りごとが表面化しにくいことも。そのため、親が気づいてあげることが第一歩になるのです。
けれど、「気づいた」ときに次に必要なのは、「診断を急ぐこと」ではありません。
それよりも大切なのは、
・わが子の特性を知ること
・できる工夫を日常に取り入れること
・支援機関や学校に、気軽に相談すること
・親自身も安心できる場所を持つこと
これらの“支援の輪”を広げていくことです。
家庭でできるサポートには、「視覚・聴覚どちらが得意か?」に合わせた工夫や、「スモールステップ」「繰り返し練習」などの学習戦略があります。
さらに、子どもに自信を育てる言葉かけや、「一緒にがんばろう」という姿勢も大きな力になります。
最後に
子育てにおいて、保護者自身の自己肯定感と情報との出会いはとても大切です。
あなたが学び、悩み、調べ、この記事にたどり着いたことこそが、すでに「大切なサポートの一歩」です。
子どもが安心して学べる土台は、親がひとりで抱え込まず、助けを求められる環境の中にこそ育ちます。
どうか、焦らず、自分たちのペースで進んでください。
“つまずき”のその先には、必ず新しい学びと可能性が待っています。
◼︎参照元一覧
・文部科学省|特別支援教育資料「通常学級に在籍する発達障害の可能性のある児童生徒への指導について」
・文部科学省|合理的配慮Q&A
・小児科専門医監修|「ワーキングメモリと学習の関係」(メディカルノート)
・発達障害情報・支援センター|発達障害とは
・LITALICO発達ナビ|発達障害グレーゾーンの特徴とチェックリスト
・LITALICO発達ナビ|家庭でできる視覚・聴覚支援の工夫集