「うちの子だけ?」じゃなかった!九九が覚えられない子に共通の“3つの原因”とは?
公開日:2025/08/20 更新日:2026/06/03小学2年生で本格的に始まる「九九」。多くの子がスムーズに暗唱できる一方で、何度練習しても覚えられない子もいます。
本記事では、九九につまずく子どもに見られやすい3つの原因や、発達障害との関係、相談先、家庭でできるサポート方法までを、わかりやすく解説します。
「みんなできてるのに、なんでうちの子だけ……?」
——子どもの勉強が思うように進まないと、つい焦ったり不安になったりしますよね。
特に、小学2年生で始まる「九九」は、多くの親にとって“つまずきポイント”の一つ。
周りの子が覚え始める中、自分の子だけが苦戦しているように見えると、「うちの子だけ?」と感じてしまうのも無理はありません。
でも安心してください。九九につまずくのは、あなただけでも、お子さんだけでもありません。
子どもが九九を覚えられないとき、最初に知っておきたい「原因」として、背景にある3つの“学びの特性”をわかりやすく解説していきます。
1. ワーキングメモリが少し弱い
九九が覚えられない子どもの多くに見られるのが、「ワーキングメモリ(作業記憶)」の弱さです。これは、聞いた情報を短時間記憶して、使うための“脳のメモ帳”のようなもの。
たとえば、「3×4は?」と聞かれたとき、
・「3の段の言い方」を思い出す
・3×4が何番目かを考える
・「12」と答える
という一連の流れを、頭の中で一時的に処理する必要があります。
ワーキングメモリが弱い子は、この「一時的な保持と操作」が苦手なので、途中で情報が抜け落ちてしまい、「あれ?何だっけ?」と混乱してしまうのです。
▶︎ 対処のコツ
・一度に覚える数を減らす(例:まずは2の段だけ、など)
・「3×4=12」と声に出してテンポよく唱える
・書いて覚えるよりも、リズムや歌で楽しく反復
「集中力がない」ように見える子も、実はこの“脳のメモ帳”が疲れているだけかもしれません。
2. 聴覚処理に時間がかかる
九九は「聞いて、覚えて、言う」が基本。ところが、聴いた音を処理する力(聴覚処理)がゆっくりめの子は、リズムに乗れなかったり、聞いた内容をすぐに言えなかったりします。
特に、以下のような傾向がある場合は、聴覚処理が関係しているかもしれません。
・音読のスピードがゆっくり
・音の聞き間違いが多い
・説明を聞いても理解に時間がかかる
九九はテンポや抑揚に乗せて覚えるスタイルが多いため、少し負担になることもあります。
▶︎ 対処のコツ
・視覚(図やカード)を使って覚える
・自分の声を録音して聞いてみる
音だけで覚えるのが苦手な子には、「見て・触って・聞いて」の3つを組み合わせた学習が効果的です。
3. 言語の処理にひと工夫が必要な子
九九は言葉のパターン暗記なので、言語的な処理力も大きく関係します。たとえば、言葉の語順がこんがらがったり、「さんしじゅうに(3×4=12)」のような音の並びがうまく定着しなかったり。
・新しい単語を覚えるのに時間がかかる
・似た言葉を混同しやすい
・「6×3」と「3×6」がごっちゃになる
こんな様子が見られる場合は、言葉のパターンそのものを“意味あるもの”として定着させる工夫が必要です。
▶︎ 対処のコツ
・「絵と結びつけて覚える」などのビジュアル化
・意味づけ学習(例:3×6は「6人の3年生が…」など)
・一度に覚えるのではなく、使いながら自然に身につける
九九の暗記にこだわりすぎず、「どうすれば本人がわかるか?」を考える視点が大切です。
音の順番や言葉のつながりに苦手さがあると、九九のリズムもつかみにくいもの。
つまずきは“覚えられない”のではなく、“処理のしかたが合っていないだけ”かもしれません。
工夫次第で理解はぐっと深まります。
▪️覚えられないのは努力不足じゃない(脳の特性によることも)
九九がなかなか覚えられないのは、決して「やる気がない」「怠けている」からではありません。子どもによって、脳の特性、つまり「記憶の持ち方」や「聞き取り方」「言葉の処理」が少しずつ違うだけ。学び方を変えてあげれば、ちゃんとできるようになります。
次章では、こうした特性が見られたときや、「もしかして発達障害?」と気になったときの考え方、家庭でできる見守り方についてお伝えします。
九九がなかなか覚えられない子を見て、焦る親御さんは少なくありません。
でもそれは、お子さんの“やる気”や “頭の良し悪し”の問題ではなく、脳の働きや発達の段階に関係している場合があるのです。
この章では、九九が覚えられない子に見られる代表的な“3つの特徴”を、脳の働きとあわせてわかりやすく解説します。「発達障害?」と不安になる前に、まずは子どもの“つまずき方”を正しく理解してみましょう。
◉ 原因1:聴覚情報の処理が苦手
九九の学習は、「耳で聞いて覚える」スタイルが基本です。でも中には、音として聞いた情報がなかなか脳に定着しにくい子もいます。これは「聴覚処理」のスピードや安定性が未熟な場合によく見られる特徴です。
たとえば…
・音の順番が入れ替わる(例:「ごくしにじゅう」→「しごにじゅう」になる)
・聞き取った直後なのに、内容を忘れてしまう
・先生の話を聞いても、頭に残らない
こうした子は、聞いて覚えるのが苦手なだけで、視覚情報や体の動きを使った覚え方なら、スッと定着することもあります。
▶︎ 工夫のポイント
・文字や図を見せながら唱える
・カードやタッチパネル教材を活用する
・歌やリズムでテンポよくインプットする
“耳からの学習”だけに頼らず、“目”や“動き”を組み合わせることがカギになります。
◉ 原因2:ワーキングメモリの弱さ
「3×6=18」と覚えていても、「6×3は?」と聞かれると答えられない子がいます。
これは、九九の一部分は記憶できているのに、それを「使う」場面になるとうまく引き出せない——そんな“ワーキングメモリ(短期記憶)”の弱さが影響している可能性があります。
▶︎ よくある特徴
・覚えてもすぐ忘れる
・問題の途中で考えが飛んでしまう
・覚えた順番が混ざる(例:「しちろくしじゅうに」と「ろくしちしじゅうに」)
ワーキングメモリは、音や順番を一時的に「脳のメモ帳」に書き留めておくような力。この容量が少ないと、情報を一時的に保持することが難しくなります。
▶︎ 工夫のポイント
・少しずつ、繰り返し練習する(短期集中より積み重ね)
・言い間違いは否定せず「もう一回やってみよう」とサポート
・数字の並びを体でリズムに乗せて覚える
ワーキングメモリの成長には個人差が大きいので、焦らず少しずつ「思い出す練習」を積み上げましょう。
◉ 原因3:「数の感覚」が育っていない
九九をただの“音”として覚えようとしても、意味が理解できていなければすぐに忘れてしまいます。これは、まだ「数の感覚」や「掛け算の意味」が十分に育っていない状態です。
こんな様子はありませんか?
・「3×5」が「3+5」と混ざる
・「4×2」と「2×4」の違いがわからない
・答えが出ても「なぜそうなるのか」は理解していない
これらは、まだ「掛け算=同じ数を何回足すか」のイメージが定着していないサイン。
式の意味が曖昧なまま暗記に入ると、丸覚えになりがちです。
▶︎ 工夫のポイント
・実際におはじきやお菓子などを並べて「3個ずつ×4列」を体験する
・絵やブロックで、数のまとまりを視覚化する
・「おにぎり3個入りのパックが4つあるよ。全部で何個?」など、日常の中で考えさせる
九九の前に「数のまとまり」や「繰り返し」の感覚を育ててあげることが、遠回りのようでいちばんの近道です。
▪️発達障害かどうかを気にしすぎないで
ここまで紹介した3つの特徴は、いわゆる「発達障害」と呼ばれる特性の一部と重なる場合があります。でも、だからといって直ちに診断が必要とは限りません。
・発達は「グラデーション」であり、誰にでも得意・不得意があります
・苦手なことがあっても、支え方次第で十分に力を伸ばせます
・「遅れている」のではなく「育ちのペースが違う」だけかもしれません
つまり、「九九が覚えられない=発達障害」と決めつけずに、「この子の理解のしかたはどうなんだろう?」と興味を持って見守ることが大切です。
「うちの子だけ…?」と不安になる気持ちは当然です。でも、比べすぎず、その子のペースで学びを応援していく姿勢こそが、いちばんの支えになります。
▪️特性を知れば、接し方も変わる
九九が覚えられない背景には、耳で聞く力、記憶を使う力、数の意味をとらえる力といった、さまざまな“学びの土台”があります。そしてそれらは、決して「努力不足」や「能力の差」ではありません。
子どもの得意・不得意に目を向けることで、親も「どうしてできないの?」から「こうすればわかるかも!」へと発想を切り替えられるはずです。
次章では、九九を覚えるのが難しい子どもたちに向けて、どんな工夫や教材、家庭でできるサポートがあるのかを具体的にご紹介します。
九九がどうしても覚えられない。学校の授業にもついていけてない気がする……。
そんなとき、頭をよぎるのが「もしかして発達障害?」という不安ではないでしょうか。
でも、ちょっと待ってください。
発達の凸凹は“病気”ではなく“特性”であり、子どもによって現れ方もさまざまです。とくに小学校低学年のうちは、学び方やペースに個人差が出やすい時期。
「心配しすぎず、でも放っておかずに見守る」という姿勢がとても大切です。
▪️発達障害とはどんなもの?
「発達障害」と聞くと、「大きな困りごと」「特別な配慮が必要」といったイメージを持つかもしれません。でも実際は、日常生活の中で少し気になる行動や学びの“つまずき”として現れることが多く、すぐに判断できるものではありません。
▶︎代表的な発達障害のタイプ
・ADHD(注意欠如・多動症):集中が続きにくい、忘れ物が多い、落ち着きがない
・LD(学習障害):読み書き・計算など、特定の学習だけが極端に苦手
・自閉スペクトラム症(ASD):空気を読むのが苦手、こだわりが強い、コミュニケーションが一方通行
九九に関して言えば、「ADHD」の集中力の波や、「LD」による記憶や処理の難しさ、「ASD」による抽象的な概念の理解の難しさが関係していることもあります。
▪️グレーゾーンという考え方
「発達障害かどうか」は、はっきり白黒つくものではありません。
診断基準に完全には当てはまらないけれど、困りごとを抱えている子どもたちを「グレーゾーン」と呼ぶことがあります。
▶︎グレーゾーンの特徴
・「診断名はつかないけど、ちょっと困っている」
・「周りから見ると普通。でも、本人はがんばっている」
・「環境やサポートの仕方次第で、困り感が大きくも小さくもなる」
九九が苦手な子も、こうした“グレーゾーン”の特性を持っているかもしれません。
診断名よりも、まずは「どうすればこの子が学びやすくなるか?」という視点で接することが大切です。
とくに1~2年生のうちは、子どもによって“学びのタイミング”に大きな差があります。九九をスラスラ言える子もいれば、まだ数の概念が曖昧な子もいて当然です。
▶︎よくあるばらつきポイント
・言葉の発達(語彙力・表現力)
・数の感覚(順序・大小の理解)
・集中力の持続時間
・手先の器用さ(文字の書きやすさ)
つまり、「まだその段階じゃない」だけかもしれないのです。
あせって「うちの子は遅れている」と決めつけるのは早すぎることもあります。
周囲と比べると不安になるかもしれませんが、発達は一人ひとり違って当たり前。
早くできる=優秀ではなく、「その子らしいペース」を信じて待つことが、学びを伸ばすいちばんの土台になります。
▪️困ったときの相談先は?
もし、「学校でもついていけていないかも」「親だけではどうしていいかわからない」と感じたら、一人で抱え込まず、早めに周囲に相談してみてください。誰かに話すだけでも気持ちがラクになることがあります。「こんなことで相談していいのかな?」とためらわず、子どもを支える一歩として、気軽に活用してみましょう。
▶︎相談できる場所
・学校の担任の先生:「最近の様子が気になる」と伝えるだけでもOK
・スクールカウンセラーや支援員:学校内に配置されている場合は、気軽に利用を
・地域の発達支援センター:専門的な視点で発達の相談ができる場所
・小児科や発達外来のある医療機関:診断が必要かどうかも含め、医学的な相談が可能
相談すること自体に「特別」な意味はありません。あくまでも「よりよく育つ方法を一緒に考える場」だと考えてみてください。
▪️不安を感じたら、まず話してみよう
九九が覚えられないことが「発達障害かも」とつながると、不安が膨らんでしまうこともあると思います。でも、困りごとを“その子の個性”として捉え、「どうすればわかりやすくなるか?」を周囲と一緒に考えていくことで、お子さんも親御さんもグッと楽になります。
▶︎大切なのは…
・一人で判断しようとしない
・他の子と比べすぎない
・「苦手を支える工夫」があると知る
・必要ならば相談先を使ってOK!
次章では、「九九が苦手」な子に実際に役立つサポート方法や、おすすめの教材などを具体的にご紹介していきます。
九九をなかなか覚えられないお子さんには、ただ繰り返し暗記させるのではなく「定着しやすい環境づくり」と「わかりやすい工夫」が大切です。
焦らず、楽しく、少しずつ取り組める方法をいくつかご紹介します。
▶︎ 家庭で取り入れたい工夫
・短時間×毎日コツコツ
5〜10分でもいいので毎日続けることで定着力がアップします。
・「聴覚」が苦手な子には視覚支援
図や色分けされたカード、イラスト付きの教材を活用。
・「順番」が混乱する子には歌やリズム
リズムにのせて九九の歌を口ずさむことで記憶が助けられます。
・「数の意味」が曖昧な子には具体物で
おはじき、積み木、お菓子などを使って掛け算の意味を視覚化します。
▪️学校と連携した声かけも大事
おうちだけで頑張るのではなく、担任の先生や特別支援担当の先生とも連携して、「こういう工夫をしてみています」「今この段でつまずいています」と共有することで、学校でも配慮してもらいやすくなります。
先生側も、家庭での工夫や本人の様子を知ることで、「その子に合った教え方」を選びやすくなるため、遠慮せず話してみましょう。
学校と家庭が同じ方向を向いて関わることで、子どもも「見てもらえている」「わかってもらえている」と安心できます。ちょっとした情報共有が、学びやすさにつながる第一歩になります。
▪️発達段階に寄り添った教材選び
九九が苦手な子には、「ゆっくり・わかりやすく・楽しく」をキーワードにした教材を選ぶと効果的です。
▶︎ おすすめ教材例(市販・無料を含む)
・九九の歌CD・YouTube動画:視覚と聴覚の両方からアプローチできる
・九九カード(色分けや絵つき):順番やパターンが理解しやすくなる
・九九ビンゴやすごろくなどのゲーム形式:遊びながら覚えられる
・「図でわかる」系のドリル:数の仕組みを視覚で理解しやすくする工夫がある
・公文式などの分散型反復教材:一気に覚えるのではなく、少しずつ定着を目指すスタイル
お子さんのタイプに合わせて「楽しめるもの」「成功体験が得られるもの」を選ぶと、自然に「もっとやってみたい」という気持ちが育ちます。教材選びで大切なのは、「その子に合ったペース」と「前向きに取り組める工夫」があることです。
「できた!」の積み重ねが自信につながり、九九の苦手意識も和らいでいきます。
九九に限らず、何かを「覚えられない」ことで自信をなくしてしまう子どもは多くいます。そんなときこそ、親の声かけが大きな支えになります。
▶︎ おすすめの声かけ例
・「ひとつ覚えられたね、すごい!」
・「前より早く言えたよ!」
・「やり方を工夫してみるのもいいね」
「できたこと」に目を向けて、小さな成長を一緒に喜ぶこと。
それが、学び続ける力の土台になります。
子どもは、親のちょっとした言葉で安心したり、やる気になったりするものです。間違いやつまずきよりも「前よりできるようになったこと」に注目して声をかけると、自信と意欲が自然と育ちます。
▪️その子のペースでOK。あせらず、寄り添って
九九が覚えられないことに悩むのは、お子さんだけでなく親も同じです。
でも、苦手には原因があります。そして、その子に合ったやり方を見つければ、少しずつでも前に進むことができます。
・覚え方に「その子なりの向き不向き」がある
・工夫次第で「楽しく・ラクに」覚えられる方法がある
・周囲と協力して「見守り・支える」体制を作れる
「うちの子だけ?」と思ったそのときこそ、学びの個性に気づけるチャンスです。
ぜひ、今回ご紹介した内容をヒントに、今日からできるサポートを試してみてください。
▪️「九九が覚えられない=ダメ」じゃない
「九九が覚えられないのは、うちの子だけ?」と不安になる気持ちは、とても自然なものです。でも実は、同じ悩みを抱える親子はたくさんいます。
九九のつまずきには、聴覚処理・記憶力・数の感覚といった“見えづらい原因”が隠れていることも多く、「努力不足」や「怠けている」からではありません。それらは発達特性や学び方の個性に関係していることがあり、決して本人の責任ではないのです。
また、「発達障害では?」と感じたときも、焦って判断するのではなく、まずはその子の“学び方の特性”を見守ることが大切です。困ったときに相談できる場所もありますし、家庭でできる工夫やおすすめ教材もたくさんあります。
九九がうまく覚えられなくても、あなただけじゃありません。
そして、子どもたちは「覚えられない」からこそ、「自分なりのやり方」で前に進んでいく力を持っています。
この記事が、子どもを支えるヒントになり、不安な気持ちが少しでもやわらぐことを願っています。
・文部科学省「学習指導要領 小学校算数編」
・公文式公式サイト(家庭学習・算数習得の考え方/九九習得に関するQ&A)
・ベネッセ教育情報サイト(九九の覚え方に関する保護者アンケート/チャレンジタッチ教材解説ページ)
・NHK for School「さんすう犬ワン」「九九のうた」シリーズ
・小学館『九九ビンゴ&九九すごろくで遊んで覚える!』
・発達障害情報・支援センター「LD(学習障害)とは」
・日本LD学会「算数の困難に関する理解と支援」
・『数の概念の発達と算数困難』発達心理研究
・ADHD/LDサポートNPO団体の啓発資料
・『子どもの“ワーキングメモリ”が分かる本』(講談社)
・国立特別支援教育総合研究所「発達障害の特性と対応」
・厚生労働省「発達障害者支援センター一覧」
・日本小児精神神経学会「診断までの流れと考え方」
・地方自治体の教育相談窓口案内(例:東京都、神奈川県など)
・『気になる子どもと保護者支援』(金子書房)
・『発達が気になる子の家庭学習支援』(合同出版)