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飲食店開業物語 第6章 中古の傷より大事なこと

公開日:2026/07/10 更新日:2026/07/10

第6章 中古の傷より大事なこと

商品ページには、冷蔵庫の写真が何枚も掲載されていた。 正面。 側面。 庫内。 扉。 銘板。 店主は画像を拡大して、一枚ずつ確認した。 左側面に小さなへこみ。 扉の下に細い傷。 取っ手には、少し使われた跡がある。 新品のようにきれいではない。 当然だ。 分かってはいる。 それでも、高い買い物だと思うと、細かな傷まで気になった。 「この傷、実際に見たら大きいのかな」 店主は販売店へ問い合わせた。 返ってきた説明には、傷の場所や大きさのほか、冷却状態、異音の有無、扉の閉まり方、パッキンの状態などが書かれていた。 そこで店主は気づいた。 自分は、傷ばかり見ていた。 もちろん外観も大切だ。 お客様から見える場所に置く機器なら、見た目も店の印象に関わる。 しかし、厨房の中で毎日使う冷蔵庫なら、冷えること、扉が閉まること、異常な音がしないことの方が、もっと大切だった。 少しの傷があっても、正常に動き、店の仕事を支えてくれるなら役割を果たせる。 逆に、外見がきれいでも、冷え方や動作に問題があれば困る。 中古厨房機器を見るときは、傷があるかないかだけでなく、 どこにあるのか。 使用に影響するのか。 動作確認されているのか。 付属品はそろっているのか。 一つずつ確認する必要がある。 店主は、もう一度商品画像を見た。 左側面のへこみは、設置すると壁側になり、ほとんど見えなくなる。 扉下の傷も、使用には影響しない。 それより、庫内が清掃されていることや、扉のパッキンが確認されていることの方が安心できた。 「この傷も、前のお店で働いてきた跡なのかもしれない」 そう考えると、不思議と見え方が変わった。 新品には新品の良さがある。 中古には、予算を抑えながら必要な設備をそろえられる良さがある。 大切なのは、安いという理由だけで選ばず、状態を確認して納得して購入することだった。 店主はノートに書いた。 「傷だけで決めない。働ける一台かを見る」 冷蔵庫の購入を決めた。 完璧にきれいな一台ではない。 けれど、この店で働いてもらうには、十分に頼もしい一台だった。