店主が最初に見つけた冷蔵庫は、理想に近かった。
容量は十分。
価格も予算内。
見た目も悪くない。
幅は1500mm。
厨房の壁際には、1600mmほどの空間がある。
「これなら置ける」
店主は久しぶりに、自信を持って言った。
購入ボタンを押す直前、商品ページに書かれていた注意書きが目に入った。
「設置場所および搬入経路をご確認ください」
搬入経路。
店主は画面を見ながら、少し考えた。
設置場所は測った。
厨房までの通路も、たぶん大丈夫だろう。
入口も、見た感じは広い。
見た感じは広い。
その言葉が、なぜか急に信用できなくなった。
店主はメジャーを取り出し、店舗の入口へ向かった。
左右の壁にメジャーを当てる。
表示された数字は、1450mmだった。
もう一度測る。
やはり1450mm。
冷蔵庫の幅は1500mm。
商品は置ける。
ただし、店の中に入れば。
店主は入口に立ち、しばらく何も言わなかった。
わずか50mm。
たった5cm。
しかし、入口は「少しくらい頑張れば通れるでしょう」と応援してくれる場所ではない。
冷蔵庫も、到着してから少し細くなってくれることはない。
「危なかった……」
購入前でよかった。
店主は厨房までの道を、最初から測り直した。
店舗入口。
店内の通路。
厨房入口。
曲がり角。
設置場所。
さらに、扉や取っ手を外した場合の寸法も確認した。
本体サイズだけでなく、梱包された状態ではさらに大きくなる可能性もある。
床に段差がないか。
天井や照明に当たらないか。
搬入するときに本体を回転できる場所があるか。
測り始めると、確認する場所は思った以上に多かった。
厨房機器を買うときは、置く場所だけ測ればよいと思っていた。
しかし本当に大切なのは、商品が店舗の外から設置場所まで無事にたどり着けることだった。
店主はノートに、新しい項目を書き足した。
「設置寸法より、まず搬入寸法」
最初に選んだ冷蔵庫は諦めることになった。