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第11話:補完療法入門|心を整える

公開日:2026/02/23 更新日:2026/03/02

■はじめに

癌治療中や治療後は、体だけでなく、心にも大きな負担がかかります。 「不安が頭から離れない」「気持ちが落ち着かない」と感じるのは、特別なことではありません。 今回の第11話では、補完療法として、今、注目されている「マインドフルネス・心理介入(心を整える方法)」について、無理なく取り入えるための考え方を、できるだけわかりやすく整理します。 これまでの第1話から第10話までは、癌告知後の混乱、情報整理、食事、睡眠、体のだるさ、そして補完療法としての運動療法など、癌治療と暮らしを支える土台についてお伝えしてきました。 ここでいう補完療法は、手術・抗がん剤治療・放射線治療などの標準治療の代わりではありません。 あくまで、治療中や治療後の生活を支え、日々を少しでも過ごしやすくするための方法として考えていただければと思います。 補完療法が進んでいるアメリカのSIO(米国統合腫瘍学会)やASCO(米国臨床腫瘍学会)のガイドラインでも、こうした統合的なケアは「標準治療に追加して」症状緩和やQOLを支えるものとして注目されています。 この記事は、“健康を設計する”店長 掛江(一級建築士/健康管理士一般指導員/腸内環境管理士)が、腸活を軸に、フコイダンをはじめ健康に関する情報をわかりやすく整理してお届けしています。

■マインドフルネス・心理介入とは?

「心を整える」と聞くと、 ・前向きになりましょう、という話? ・気の持ちようで何とかする話? ・つらいのに、気持ちまで頑張れと言われそう… と感じる方もいるかもしれません。 でも実際は、そうではありません。 マインドフルネスや心理介入は、つらさを否定したり、無理に前向きになるための方法ではなく、 不安や落ち込み、考えごとが続いてしまう状況の中で、少しでも心と体の負担を軽くするための支え方です。 たとえば、 ・呼吸や体の感覚に注意を向ける ・気持ちを言葉にして整理する ・考え方のクセに気づく ・生活リズムを小さく整える といった方法が含まれます。

■なぜ今、「心」が注目されているのか?

治療中や治療後は、次のような心の負担が起こりやすくなります。 ・検査結果を待つ間の不安 ・再発しないか?への不安 ・気持ちの落ち込み ・眠れない・眠りが浅いから心配 ・頭の中で考えが止まらない ・人にうまく話せないつらさ こうした症状は、本人の「弱さ」ではありません。 がんという、人生で経験したことのない、命に係わる大きな出来事に向き合う中で、誰にでも起こりうる自然な反応なのです。 SIO(米国統合腫瘍学会)やASCO(米国臨床腫瘍学会)の2023年ガイドライン(成人がん患者の不安・抑うつ症状に対する統合的ケア)では、複数の補完療法の中でも、マインドフルネス系介入が重要な選択肢として強く推奨されています。 なかでも、 MBSR(マインドフルネスストレス低減法)や MBCT(マインドフルネス認知療法)などは、癌治療中もしくは治療後の生活のQOL向上のための有効な手法として位置づけられています。

■どんなことが期待できるの?

個人差はありますが、マインドフルネス・心理介入には、次のようなことが期待されています。 ・不安をやわらげる ・気持ちを整理しやすくする ・気分の落ち込んだ時の補助的な対処法 ・ストレス反応を和らげる ・睡眠をサポート ・生活の質(QOL)の維持・改善をサポート 2024年のメタ解析では、がんサバイバーを対象としたマインドフルネス系介入について、心理的ウェルビーイング(心の健やかさ)に有意な改善が報告されています(31研究、計2,651人)。 また、進行がん患者を対象としたメタ解析でも、CBT系・マインドフルネス系介入による苦痛(distress)や生活のQOLへの効果が検討されており、目的別に使い分けながら支援する考え方が進んでいます。 ※なお、研究結果は対象(がん種・病期・治療中/治療後)や方法(対面/オンライン、個別/集団)によって差があります。 「誰にでも同じように効く」と考えず、目的ごとにエビデンスを見ることが大切です。

■日本での位置づけは?

日本でも、マインドフルネス・心理介入に関する研究報告があります。 特に、乳がん患者さんを対象にしたMBCT(マインドフルネス認知療法)は、実行可能性研究からランダム化比較試験(RCT)へと進んでいます。 1)日本の実行可能性研究(feasibility study) 日本の乳がん患者さん(Stage I–III)12名を対象に、8回のグループMBCTを行った研究では、全員がプログラムを完了し、平均参加回数は7.7回と高い参加継続率が報告されました。 また、不安やトラウマ関連症状、QOLに改善の方向性が示され、日本の患者さんに受け入れられやすい可能性が示されています。 2)日本のランダム化比較試験(RCT) その後、日本の外来乳がん患者さん(Stage I–III)74名を対象にしたRCTでは、8週間のMBCT群(38名)と待機対照群(36名)が比較されました。 主要評価項目は心理的苦痛(不安・抑うつ)で、再発不安、疲労、QOLなども評価されています。 この研究では、MBCT群で ・心理的苦痛(不安・抑うつ) ・再発不安 ・疲労 ・スピリチュアル well-being ・QOL の改善が報告され、介入終了4週間後にも差が維持されたとされています。 一方で、対象は主に非転移の乳がん患者さんであり、すべてのがん種・病期にそのまま当てはまるとは限りません。 そのため、「誰にでも同じように効く」と断定せず、目的に合わせて取り入れることが大切です。 ※参考 ・日本の乳がん患者を対象としたMBCT実行可能性研究(JJCO, 2018) ・日本の乳がん患者を対象としたMBCTランダム化比較試験(J Pain Symptom Manage, 2020)

■マインドフルネスって何をするの?

マインドフルネスは、簡単にいうと、 「今この瞬間の体験(呼吸・体の感覚・音・気持ち)に、評価しすぎずに注意を向ける練習」です。 大事なのは、次の点です。 ・「無心になる」ことを目指すものではない ・不安をゼロにする練習ではない ・雑念が出ても失敗ではない たとえば、呼吸に注意を向けていても、「また不安なことを考えてしまった…」となることがあります。 でもそこで自分を責めず、「今、また考えてしまったな」と気づいて、また呼吸に戻る。 この繰り返し自体が練習になります。

■心理介入(CBTなど)って何?

心理介入にはいろいろありますが、代表的なものの一つが CBT(認知行動療法) です。 CBT認知行動療法)は、ざっくりいうと ・気持ち(不安・落ち込み) ・考え方(頭に浮かぶ受け止め方) ・行動(寝込む、避ける、誰にも言わない等) のつながりを整理して、少し楽になる行動や考え方を一緒に探していく方法です。 たとえば、 ・全部悪い方に考えてしまう ・不安で何も手につかない ・眠れない→さらに不安になる という流れを、いきなり大きく変えるのではなく、 小さな一歩(行動・考え方・生活リズム)から整えていくのが特徴です。

■今日からできる、無理なく始めるコツ

心を整える方法も、運動療法と同じで、 「頑張ること」より「続けやすいこと」が大切です。 おすすめの始め方 ・まずは 1分 から ・うまくできなくてもOKにする ・つらい日は短くする ・「ゼロにしない」を目標にする ・できた日を小さく記録する ●例1:1分呼吸(マインドフルネス) ・椅子に楽に座る(横になってもOK) ・呼吸を変えようとせず、自然な呼吸に注意を向ける ・吸う・吐くを数回感じる ・考えごとが出てきたら、「考えごとが出た」と気づいて戻る ●例2:寝る前30秒の体感チェック ・今、肩に力が入っているかな? ・呼吸は浅いかな? ・手足は冷えていないかな? ・「良い・悪い」の評価ではなく、気づくだけでOKです。 ●例3:ノート1行(心理介入の入り口) ・今日いちばん不安だったこと ・そのとき体に出た反応(動悸、肩こりなど) ・その中でもできたことを1つ 気持ちを外に出すだけでも、少し整理しやすくなることがあります。

■こんなときは、ひとりで頑張りすぎないで

マインドフルネスやセルフケアは役立つことがありますが、 つらさが強いときは、専門家につながることがとても大切です。 次のような場合は、主治医・看護師・がん相談支援センター・心理職(公認心理師/臨床心理士など)への相談を検討してください。 ・不安や落ち込みが強く、日常生活に大きく影響している ・眠れない状態が続いている ・食欲低下が続く ・つらい気持ちを一人で抱え込んでいる ・「何もしたくない」が長く続く ・自分を傷つけたくなる気持ちがある(※この場合は早めの相談が必要です) 相談することは弱さではなく、治療と生活を守るための行動です。 ●できる範囲で大丈夫 治療中は、心も体も、日によって波があるのが自然です。 「昨日はできたのに、今日はできない」と感じる日もあります。 ・でも、今日は1分呼吸ができた。 ・今日は深呼吸を1回した。 ・今日は不安を言葉にできた。 それだけでも、十分に意味のある一歩です。 ご家族であれば、 ・話を否定せずに聞く ・「頑張れ」より「しんどいね」と声かける ・一緒に静かな時間をつくる こうした関わりも、大きな支えになります。

■まとめ

マインドフルネス・心理介入は、がん治療の代わりになるものではありません。 しかし、治療中・治療後の暮らしを支える補完療法の一つとして、取り入れる価値がある方法です。 大切なのは、 ・無理をしないこと ・一人で抱え込まないこと ・続けられる形にすること 「心を整える」は、特別な人だけがすることではありません。 つらい時期を乗り切るための、日々の小さな工夫の一つです。 【コラムニスト紹介】 “健康を設計する”くらしいきいき楽天市場店 店長 掛江 一級建築士/健康管理士一般指導員/腸内環境管理士 建築で培った「構造化・優先順位付け・継続設計」の考え方を、腸活を中心とした日々の健康習慣に落とし込み、続けやすい形で提案しています。 2002年ごろ、妻が子宮頸がん(初期)の診断を受け、がんセンターで手術を経験しました。 がんは本人だけでなく家族の心にも大きな影響を与えることを、当事者家族として実感しました。 この経験をきっかけに、妻が飲んでいたフコイダンの取り扱いを始め、2003年から関連商品に携わってきました。 現在は、腸内環境を軸に、がんを取り巻く情報(予防の考え方、検診、治療と生活)を一次情報にあたりながら、根拠と限界を明確にして解説しています。 私たちは、商品をすすめる前に、まず生活を整えることを大切にしています。 不安なときは、食事・睡眠・運動の基本と、主治医との連携を土台に、管理栄養士と一緒に「続けられる形」を考えていきましょう。 【免責】 ※本コラムは一般的な情報提供を目的としており、診断・治療を代替するものではありません。体調に不安がある場合や治療中の方は、必ず主治医を含む医療機関にご相談ください。

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更新日:10/29(10/22〜10/28集計)