機内誌で見つけた伝統香を追いかけて台湾の離島まで行った話
公開日:2026/07/03 更新日:2026/07/03今から十数年前のことです。
バンコクへ向かうJAL便の機内で何気なく機内誌を眺めていました。
その中に、台湾の離島・澎湖(ポンフー)に伝わる伝統香についての記事が掲載されていました。
当時の私は澎湖という島の存在すらよく知りませんでした。しかし、その記事の内容に強く惹きつけられたのです。
澎湖には古くから魔除けの香として親しまれてきた伝統香がありました。
原料には澎湖の三宝とも呼ばれる天人菊、山芙蓉(タイワンフヨウ)、ヨモギなどの天然植物を使用し、化学香料は一切使いません。すべて自然の素材だけで作られる、昔ながらのお香です。
ところが時代の変化とともに、この伝統香は一度姿を消してしまいます。需要の減少により生産は途絶え、長い間作られなくなっていました。
しかし数十年前その伝統香を作っていた家系の流れをくむ人物が立ち上がります。
古い資料や伝承を集め、失われた製法を研究し数百年前から伝わる香りを現代に復活させたのです。
数百年前に人々が魔除けとして使っていた香りをその子孫が再び蘇らせる。私はその物語に強く心を動かされました。
そして記事を読んだ翌月、私は台湾行きの航空券を手配していました。
空港到着後バイクを借り目的地である二崁村(ニガン村)へ向かいました。
二崁村は台湾本島とはまったく違う独特な雰囲気を持つ集落です。
石造りの古い建物が並びどこか昔の台湾がそのまま残っているような空気があります。
観光地でありながら過度に商業化されておらず、静かで穏やかな時間が流れていました。
機内誌で見た場所が本当に目の前にある。
そんな不思議な感覚を今でも覚えています。
現地で初めてその香りに触れ生産者の話を聞くうちに、このお香への興味はさらに深まっていきました。
そして私はその後も澎湖へ足を運ぶようになります。
三度目の訪問の際ついに現地で社長と直接お会いする機会をいただきました。伝統香を復活させた家系の流れをくむ方です。
お話を伺う中でこのお香に対する想いや歴史への敬意を強く感じました。そしてご縁をいただき現在では生産者から直接仕入れを行っています。
振り返ってみると不思議なご縁だったと思います。
当時の私はただ機内誌で見た伝統香に興味を持っただけでした。
数百年前の魔除香。
一度は歴史の中から姿を消しながらもその子孫の手によって復活した香り。その物語に惹かれ気がつけば台湾の離島まで足を運んでいました。
今でもこのお香の香りに触れるたびに、初めて二崁村を訪れた日のことを思い出します。
機内誌の小さな記事から始まった好奇心。
それが人との出会いにつながりやがて現在まで続くご縁になりました。私にとって澎湖の伝統香は単なる商品ではありません。
その土地の歴史や文化そして伝統を守り続けてきた人々の想いが詰まった特別なお香なのです。