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北海道白糠町
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【生産者紹介:白糠印刷&とみやストア】消えかけた町の味を、次の世代へ
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【生産者紹介:白糠印刷&とみやストア】消えかけた町の味を、次の世代へ
【生産者紹介:白糠印刷&とみやストア】消えかけた町の味を、次の世代へ
公開日:2026/05/22 更新日:2026/05/22
📣白糠町のソウルフードはこちら
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左から、白糠印刷佐々木社長&幸希さん、元とみやストア吉松さん
その味は、もう食べられなくなるはずでした。白糠町で50年以上愛されてきたソウルフード、「鳥じん・らむじん・ぶたじん」。 運動会で青空のもと、家族で囲んだ焼肉。夏休みの夕暮れ、庭に広がるあの香り。白糠町で育った人にとって、「鳥じん」は思い出そのものです。 製造していた「とみやストア」の廃業により、その歴史は静かに幕を閉じようとしていました。しかし、この町の味を、消すわけにはいかない—。 その想いで立ち上がった人がいました。白糠町で印刷業を営む白糠印刷株式会社の3代目社長、佐々木啓行さん(45歳)です。印刷業から、肉の加工へ。まったくの異分野への挑戦でした。 一方で、30年にわたりこの味を守り続けてきた、とみやストアの吉松俊幸社長。吉松さんもまた、この味を受け継いできた一人だったのです。途絶えかけたバトンは、その時代ごとに、どのようにつながれて来たのでしょうか。 その背景を聞きました。
左から、らむじん、ぶたじん、鳥じん。白糠町民のソウルフード。
血縁を超えて受け継がれてきた味
吉松さん:この商品は、もともと自分も人から受け継いだものなんだ。50年ほど前、父が「とみやストア」を経営をしていて自分はそれを手伝っていた。知り合いの「宮本商店」も親子でやっている個人商店でね。息子がコンビニエンスストアにしたいと言い出した。 宮本商店が作っていたのが、ラム肉をジンギスカン風に味付けした「らむじん」。コンビニに店を変えるに当たり、もう作ることはできない。だからこれを、とみやストアでやってくれないかと言われて、受け継いだのが始まりだよ。血縁関係はない。ただ、一緒に町で商売をやっていた仲間だったんだ。 当時、白糠町の人口も今の倍ぐらいで賑やかだった。個人商店も多く、町内に30件ほどあった。白糠町には、花火大会や商工会の祭りなど、人が集まる行事には肉を焼く、バーベキューをするっていう文化があって、各商店がオリジナルの味付け肉を売っていた。宮本商店が作っていたらむじんも、そんな中で町の人に愛されていたんだ。
白糠印刷に新設された加工場で機械の使い方を教えています。
とみやストアで誕生、「鳥じん&ぶたじん」
吉松さん:レシピはそのまま受け継いだ。タレの味も変えていない。ただ、ラム1種類だけだと飽きがくる。そこで同じタレに鶏肉や豚肉を漬けてみたら、これがまたうまかった。 結果的に、らむじんに加えて鳥じん、ぶたじんの3種類に広がった。最初は売上の9割がらむじんだったけど、今では逆転して9割が鳥じん。白糠の名産といえば鳥じん、という存在になったね。
時代の波とともに。65歳をゴールに走った
吉松さん:2019年、50歳の時にひとつの転機があった。消費税10%やキャッシュレス化の波が白糠にも押し寄せて、新しいレジを導入するか迷ったんだ。でも高齢のお客さんも多かったから、苦情も想像できた。 さらにコロナ禍や大型のチェーンの進出もあって、個人商店は減っていった。そこで実店舗はたたんで、「鳥じん・らむじん・ぶたじん」の製造販売に特化したんだ。地元に根付いていたし、ふるさと納税返礼品としても好評だったので助かったよ。 売れ行きは好調だったけど、それでも、商売は、65歳になったらやめると決めていた。それはもう前々から、同い年の奥さんと決めていたことなんだ。 「65歳までは」それを一つのゴールとして、全力で走ってきた。
白糠印刷が挑んだ“異業種承継”
2025年、いよいよ吉松さんが65歳を迎え、とみやストアは廃業。「鳥じん・らむじん・ぶたじん」も消滅の危機にありました。それを引き継いだのが白糠印刷の佐々木社長です。 白糠印刷は、町内でカレンダーやポスター、パンフレット等の制作のほか、行政指定ゴミ袋の印刷なども手掛けています。祖父、伯父、そして現在の佐々木社長と3代続く、町に欠かせない印刷会社です。 そんな白糠印刷には、もう一つの顔があります。それが白糠町ふるさと納税の中間事業者として町内の事業者と寄付者を繋ぐ役割です。 白糠町では、ふるさと納税制度が始まる以前に、ECショップ「しらぬか町商店(現・栄三郎店)」を運営。町の産品を直接、全国にお届けする取組みを行っていました。3年間、役場が運営を行った後に、運営事業を民間に向け公募しました。そこで手を挙げたのが、当時専務だった佐々木さんです。 20代だった佐々木さんは、ITやペーパーレス化の流れをいち早くキャッチ。この先、印刷業だけで良いのかという危機感と、持ち前のチャレンジ精神で、全く未経験だったECの世界に飛び込んだのです。 その後、2008年にふるさと納税制度がスタート、2010年から白糠町でも返礼品の贈呈を始めました。その時に生きたのが、ECショップ運営で培った経験です。町内の事業者と綿密に連携しながら、商品の出品や在庫管理、発送業務を行っています。 とみやストアの商品も返礼品として関わってきた佐々木さんだからこそ、「鳥じん・らむじん・ぶたじん」が、町民のみならず、全国の方から愛されている、価値ある商品であることを理解していたのです。
「これが本業です。」そう言って印刷所の中も見せてくれました。
佐々木さん:とみやストアさんが廃業すると聞いて、まず “もったいない!”と思いました。町民からも全国の寄付者からも愛されている商品が、消えてしまうなんて、と。吉松社長に何度も、本当にやめるんですか?もったいないですよ。と話しました。 でも、吉松社長の65歳で辞める、という決心は固くて。徐々に、それなら白糠印刷で受け継げないかな、と考えるようになりました。 聞けば、吉松社長も、もともとは宮本商店から受け継いだとのこと。この話を聞いてよりいっそう、自分達の代で「鳥じん・らむじん・ぶたじん」を途絶えさせてはいけない!という気持ちを強くしました。 自分や妻もそうですし、白糠で育った者はみんな、運動会や夏休みの想い出に、この味があるんです。これを次の世代に繋いでいくのが自分の使命なのでは、と考えるようになりました。 ただ、肉の加工はまったくの畑違い。自分にできるだろうか?という不安もありましたが、『そんなに難しく考えるな、俺が全部教えてやるから大丈夫だ』という吉松社長の言葉に背中を押されました。 また、白糠町で頑張っている色々な人達からも、大いに刺激を受けました。ECやふるさと納税を担当する役場の方、バイタリティ溢れる事業者の方、そして全くの異業種から大森水産を事業承継した同年代の社長など…。自分も負けてられないな、と思ったんです。
らむじんになるラム肉。かたまり肉をスライスします。
佐々木さんの妻で製造管理責任者の幸希さん。
佐々木さん:継承を決断してからは、本当に慌ただしかったです。工場の建設、各種申請、機材の準備、関係各所への説明…。2026年2月に承継を決めて、なんとか4月から製造を開始できる体制を整えることができました。製造管理責任者は妻の幸希(さき)が担っています。 佐々木さん:自分はどんどん新しいことに挑戦していますが、妻はいつも応援してくれます。今回も、『あの鳥じんを自分達が引き継げるなんてすごい!』と言って喜んでくれました。 現在は幸希さんと、新たに採用した三上玲美さんの二人体制で製造を担当。 師匠と慕う吉松さんの指導のもと、秘伝のタレも受け継がれました。
秘伝のタレのレシピも受け継がれました!
「私たちでしっかりと、この味を守っていきます!」
次の世代へつなぐために
現在、「鳥じん・らむじん・ぶたじん」は道の駅しらぬか恋問館や町内スーパー、釧路の和商市場などで販売されているほか、ふるさと納税の返礼品として全国へ届けられています。 吉松さん:商売の喜びは、儲けることだけじゃない。お客さんに喜ばれながら続けていけること。それが一番だよ。 佐々木さん:鳥じんは、町の想い出と密接につながっている食べ物です。血縁ではなく受け継がれてきたことを知り、自分がその歴史の一人になりたいと思いました。自分の代が守り育てて、また次の世代に必ずつないでいきます。
白糠印刷さん、元とみやストアさん、白糠町役場の面々