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忘れられない「赤バッテン」との出会い:吉田カバンが教えてくれたモノへの愛着

公開日:2026/06/21 更新日:2026/07/20

20歳の記憶は、40代の今も色褪せない。

それは、まだ何者でもなかった高校生の頃。友人が持っていた「ポーター」のバッグが、僕と吉田カバンとの最初の接点だった。 黒い生地に縫い付けられた四角いロゴは、控えめながらも確かな存在感を放っていた。しかし、当時の自分にとってそれは手の届かない憧れの象徴。ただ漠然と「いつか欲しい」と心に留めるのが精一杯だった。 その思いが具体的な形を伴って動き出したのは、20歳になったある日のことだ。 意を決してポーターを扱う店に足を踏み入れた僕の目に、思いがけないものが飛び込んできた。 カーキ色の武骨な生地に、鮮やかな赤い糸で「×」印が刺繍されたタグ。 それが「ラゲッジレーベル」というブランドであり、同じ吉田カバンの製品だと知ったのは、店員に教えられてからだった。 ポーターとは違う、もっと荒々しく、それでいて洗練されたその佇まいに、僕は一瞬で心を奪われた。

不便さをも愛した、

初めての吉田カバン『ライナー』

当時の僕にとって、その「赤バッテン」のロゴは、衝撃前と言っていいほど格好良かった。 ポーターへの憧れは一瞬で上書きされ、僕はその場で『LINER(ライナー)』シリーズのラウンドファスナー財布を手に取っていた。 それが、僕にとって初めての吉田カバン製品となった。 正直に言えば、今思えば決して使い勝手の良い財布ではなかった。マチの無いマジックテープの小銭入れ、札入れ、そしてクリアポケットのカード入れ。 その構成はどこか不器用で、現代のスマートな財布とは比較にならない。 しかし不思議なことに、その使いにくさすら愛おしく感じられた。 「その使いにくさは時間と共に慣れてきて、その使いにくさよりもデザイン性の方が上回って……」 日々の使用で少しずつ手に馴染んでいく感覚。その過程で、デザインの持つ圧倒的な力が、機能的な不便さを遥かに上回っていくのを実感した。 僕は完全に、ライナーというデザインの虜になっていた。 この経験は、僕にモノとの付き合い方を教えてくれた。 単なる道具としてではなく、共に時間を過ごす相棒として、不完全さも含めて愛着を育むことの価値を。

赤から青へ。受け継がれるデザインの衝撃

やがてブラックとオリーブの2色で展開されていたライナーシリーズに続き、『NEW LINER(ニューライナー)』という後継シリーズが登場する。 タグは「赤バッテン」から「青バッテン」へと変わり、カラーも新たにブラックとネイビーの2色が用意され、素材も進化した。 しかし、その武骨で機能美あふれる精神は、紛れもなく受け継がれていた。
これらのシリーズのデザインを手がけたのは、当時吉田カバンに在籍していたデザイナー、山口幸一氏だ。 カバンの素材としては誰も顧みなかった「トラックの幌(ほろ)」や軍用の資材を落とし込み、「一針入魂」の職人技と火花を散らせながら形にする――。 そんな彼のアイディアが生み出すインパクトは、単なる流行とは一線を画していた。 僕が20歳の時に感じた「赤バッテン」の衝撃的な出会い。あれほど心を揺さぶられるデザインに、その後なかなか巡り会えていない。 それは、彼のデザインがいかに秀逸であったかを物語っている。

時を経て、40代の今、

再び手にしたいと思えるモノ

あれから数十年が経ち、僕は40代も後半になった。様々なブランドの、多種多様なカバンや財布を使ってきた。 しかし、心の片隅には、いつもあの「赤バッテン」がある。僕の感性を揺さぶった最初の記憶であり、モノを愛するということの原体験そのものだ。 幸いなことに、ライナーとニューライナーシリーズは、誕生から40年以上が経った今なお現行品として製造され続けている。(残念ながら生産終了したモデルも多数ある) 時代が変わっても変わらない普遍的な本質を宿したまま、あの頃と同じ姿でそこに在り続けているのだ。 それは、このデザインが時代に左右されない本物の価値を持っていることの何よりの証拠だろう。 デジタル化が進み、モノの価値が変わりゆく時代だからこそ、ふと立ち止まって考える。 20歳の僕が感じたあの高揚感を、今の自分がもう一度味わってみたい、と。 ライナーは、僕にとって単なる過去の思い出ではない。人生の節目節目で、再び手に取りたくなる。 そんな稀有なブランド。49歳の僕は思う。

クールキャットで買える、ラゲッジレーベル

「ライナー」「ニューライナー」シリーズ

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