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一目惚れではなかった。ポーター「ALL」のリュックサックが、僕の日常を変えるまで

公開日:2026/06/12 更新日:2026/07/20
世の中には、一目で心を奪うプロダクトがある。一方で、静かに、しかし確実に日常へと侵入し、気がつけば手放せない存在になっているプロダクトもある。 僕にとって、吉田カバンの「PORTER ALL(オール)」は、完全に後者だった。 初めての出会いは2022年の展示会。無数に並ぶ新作の陰で、そのシリーズは静かに佇んでいた。 一見すると、ブランドが得意とするミリタリーテイストの、見慣れたコレクションの一つ。正直に言うと、その時の印象は薄かった。 ポーチを着脱できるというギミックにも、さほど興味を示さなかった記憶がある。 しかし、その素っ気ない出会いこそが、深い愛着へと続く序章に過ぎなかったのだ。

再会の違和感。

洗練されたデザインへの気づき

それから一年後、街の店頭に「ALL」が並んだ。 何気なく手に取ったその瞬間、かつて展示会では感じなかったある種の「違和感」が胸に芽生えた。それは、圧倒的なデザインの洗練度に対する驚きだった。 特に生地の質感が放つ微かな光沢が、僕の好みの中心を静かに射抜いた。 ブラックとベージュの2色展開のうち、僕の目を強く捉えたのはベージュだった。 明るいトーンが、高密度ナイロン生地の持つ上品な光沢と立体感を劇的に際立たせ、無骨なはずのミリタリーデザインに、予期せぬエレガンスを与えていたのだ。 これこそが、現代の街に馴染む「アーバンミリタリーのカッコ良さ」なのだと合点がいった。 その瞬間から、僕の中で「ALL」というシリーズへの興味が、急速に膨らんでいった。

アリスパックという計算され尽くした造形美

シリーズの中でも、特にリュックサック──通称「アリスパック」と呼ばれるフラップ付きのモデルは、その立体的な構造が際立って美しかった。 * 機能が生む造形美 手前に配置された複数のポーチ、サイドのボトルホルダー。それらは単なる収納ポケットではなく、バッグ全体のシルエットを彫刻のように構築する重要なデザイン要素として機能している。 * 絶妙なバランス バッグの中央に堂々と配置されたポーターのロゴと、各所に配されたテープのレイアウト。ポケット、ロゴ、テープが織りなす構成は、1ミリの狂いもないほど計算され尽くした調和を感じさせた。 荷物を何も詰めていない状態で、くたっとさせた時の佇まい。その姿を見たとき、僕は自分の日常をそこに重ね合わせていた。このリュックを背負って街を歩く自分の姿が、鮮明に目に浮かんだのだ。 衝動的に、僕はベージュのアリスパックの購入を決めた。

道具が日常に溶け込むとき

実際に使い始めてみると、その魅力はさらに深まっていった。 大きすぎず小さすぎない、絶妙なサイズ感。それは僕のどんなコーディネートにも驚くほど自然に馴染んでくれた。 夏はリネンシャツなど明るい色の服と合わせて軽快に。冬はシックなウールコートのスタイルに、ベージュのミリタリーテイストが温かみのあるアクセントになってくれる。 コーディネートの一部として、これほどしっくりくるバッグは本当に久しぶりだった。 ー小物を美しく整理する、僕の使い方ー 手前のポケットだけでも4つあるため、日常の必需品たちがそれぞれの「定位置」へと収まっていく。 * フラップポケット: すぐに取り出したい常備薬や目薬を。 * 正面の着脱式ポーチ: AirPodsの完璧な定位置に。 * サイドポケット(右・左): 片方には財布、もう片方には名刺入れとハンドクリームを。 メイン収納は約13Lと日常使いに最適。それでいて、日帰り旅行や急な短期出張にも十分対応できる頼もしい容量だ。

「らしさ」の現代的な再解釈

このリュックを使うたびに、自分自身の気分が心地よく高揚するのを感じる。 「吉田カバンらしいな」と最初に思ったあの感覚は、間違っていなかった。ただ、その「らしさ」の本質は、単なる過去のアーカイブの反復ではなかったのです。 ミリタリーという普遍的なモチーフを、現代の生活習慣と美意識に合わせて見事に再解釈する。使い込むほどに、そして時間が経つほどに、そのデザインの深みがじわじわと身体に伝わってくる。 初見で周囲を圧倒するような派手さはない。しかし、だからこそ絶対に飽きが来ない。 最初は何も感じなかったはずのプロダクトが、時間をかけて徐々に魅力的に見えてくる。 そして実際に使うことで、完全に自分の一部となっていく。 「ALL」というシリーズは、そんな吉田カバンならではのものづくりの真髄を、最も現代的な形で体現している。

ゆっくりと好きになるということ

世の中には、一目で「かっこいい」と思わせるプロダクトが溢れている。しかし、「ALL」のアリスパックは少し違った。 それは、じっくりと時間をかけて関係を築き、その過程で徐々に恋に落ちていくタイプの、とても稀有で誠実な存在だ。 一目惚れから始まる情熱的な関係も良い。だが、静かな対話を通して少しずつ理解を深めていくような、穏やかで永続的な関係もまた、人生を豊かにしてくれる。 このリュックは、僕にモノとの正しい付き合い方を教えてくれた。 今日も僕は、この少しずつ好きになった頼れる相棒を背負って、街へと出かける。

アリスパックだけじゃない

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