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第10回 | 文字の力について

公開日:2026/06/27 更新日:2026/06/27
名刺を作るとき、紙の厚さや色、レイアウトに目が向きがちですが、活版名刺を作っていると、あらためて「文字の力」を感じます。 もともと活版印刷は、活字と呼ばれる文字のハンコを並べ、インクをつけて紙に押し当てる印刷方法でした。現在では、活字だけで名刺を作ることは難しくなり、当店ではデジタルデータからマグネシウムの金属版を作り、活版印刷機で一枚ずつ圧をかけて印刷しています。 この方法により、活字にはない書体やロゴ、細かなレイアウトにも対応でき、厚みのある紙にしっかりとした凹みや陰影を表現することができます。 名刺の印象は、書体によって大きく変わります。明朝体は落ち着きや信頼感を、楷書体は格式やまじめさを、ゴシック体はすっきりと現代的な印象を与えます。少し個性のある書体を選ぶと、その方らしい感性や世界観も伝わります。 活版印刷では、文字が紙に少し沈み込み、光の当たり方によって陰影が生まれます。そのため、書体選びによる印象の違いが、通常の印刷よりもはっきりと表れます。 当店では、職種やお名前の雰囲気、漢字の画数、余白、見せたい印象などを考えながら書体を選んでいます。 名刺は小さな紙ですが、そこに載る文字は、その方の「顔」のようなものです。 どの書体が正解ということではありません。大切なのは、お仕事や雰囲気に合っているか、受け取る方にどのような印象を届けたいかということ。 活版名刺は派手な名刺ではありません。けれど、紙に刻まれた文字の凹みや陰影は、静かに印象を残します。 その方らしさが伝わる一枚をお届けできるよう、これからも文字選びを大切にしてまいります。