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授乳姿勢を楽にする! 見逃すことができない手首や肘の支え

公開日:2026/10/29 更新日:2026/10/29
本記事は佐藤珠美先生によるコラムで、 「乳幼児のスキンケア」「寝かしつけ」「抱っこ」など、 産後のママが抱えやすい悩みに寄り添いながら、毎日の育児に役立つ情報をわかりやすく発信しています。

産後のママの負担を減らす

私のライフワークは、産後のママを少しでも「楽」にすることです。世間では「赤ちゃんのお世話くらい……」と軽く見られてしまうこともありますが、現実と世間の認識の間には、大きなギャップがあります。この問題は、あまりにも見過ごされがちです。 なぜなら、産後の身体は高齢者並みに筋力が低下しているからです。実際に「階段の上り下りが辛い」「ペットボトルの蓋が開けられない」といった状態を経験する人は少なくありません。また、ホルモンの影響で骨盤や関節の靭帯が緩むため、体がふらついたり、腰痛や恥骨痛などに悩まされたりすることもあります。 そんな状態で、3kg以上の赤ちゃんを抱えながら長時間の授乳姿勢を保つのは、非常に過酷なことです。その負担は、まさにアスリートのハードワーク並みと言えます。身体の回復にはおおよそ3か月から6か月(長い人では1年)かかります。本来なら休息をとり、リハビリを受けるべき時期であるにもかかわらず、現実はノンストップの育児に追われ、自分のケアをする余裕などありません。 産後うつなどのメンタルケアが重大な問題であることは言うまでもありませんが、もしその手前にある「身体の痛み」が和らいだらどうでしょう。体を スムーズに動かせるようになるだけで、毎日の育児はどれほど楽になるでしょうか。 だからこそ私は、ママの身体の負担を減らして「楽」を実現すること、そして痛みを予防する大切さを発信し続けています。今回は、ママにとって大きな負担になりやすい「授乳」にスポットを当て、どうすればもっとラクにできるかを一緒に考えていきましょう。

ママが楽だと赤ちゃんも楽に

1. ママが楽だと、赤ちゃんも楽になる 育児において、昔は「苦労は買ってでもしろ」なんて言われることもありましたが、今の育児は違います。ママが緊張感や辛さを隠したつもりでも、それは不思議と赤ちゃんに伝わってしまうものです。例えば、無理な姿勢で授乳しているとママの筋肉はこわばり、抱っこが硬くなってしまいます。その硬さは、肌を通じて赤ちゃんに伝わります。赤ちゃんは「なんだか心地悪いな」と感じているかもしれません。また、痛みや辛さはママの表情や声のトーンにも表れます。赤ちゃんはそれらを敏感に感じ取り、不安になってしまうのです。 だからこそ今、何より大切なのは「ママが心身ともに余裕を持つこと」です。それが巡り巡って、赤ちゃんの健やかな成長にもつながります。愛おしいわが子のためにも、まずは「どうすれば自分が楽になれるか」を一番に考えてみましょう。 1-1) ママは授乳の「土台」。ママがグラグラだと赤ちゃんも落ち着かない 授乳において、ママの体は「土台」です。ママが安定した姿勢をとれていないと、抱っこされている赤ちゃんもグラグラしてしまい、うまくおっぱいを飲むことができません。 なんとかおっぱいをくわえようとしても吸い付きが浅くなり、空気をたくさん飲み込んでしまいます。これが、吐き戻しやガスが溜まる原因になります。その結果、赤ちゃんは体力を消耗し、不機嫌になったり疲れやすくなったりするのです。赤ちゃんのためにとママが一生懸命に頑張ったことが、かえって自分だけでなく、赤ちゃんの負担まで増やしてしまっていることがあります。

ママが楽な位置に赤ちゃんを

1-2) ママが楽な位置に、赤ちゃんを連れてくる 赤ちゃんの位置に自分を無理やり合わせるのではなく、まずは「自分が一番楽な姿勢」を作って、そこに赤ちゃんを抱きあげてみませんか。楽な姿勢とは、ママの頭、背中、腕、足などが不安定になったり緊張したりしておらず、快適だと感じる姿勢のことです。もし、体に力が入っていたり前かがみになっていたりすれば、それはどこかに無理をしているサインです。 ママ自身が楽な姿勢で授乳するという、たったそれだけの意識で、赤ちゃんはおっぱいを楽に、深くくわえやすくなります。そして、赤ちゃんの頭からお尻までが一直線になることで、おっぱいの飲み込みや呼吸がスムーズになります。ママ自身の授乳のしやすさも驚くほど変わるはずです。もっと楽に、心地よく授乳の時間を過ごせる工夫をしていきましょう。

授乳を楽にする道具選び

2. 今からできる!「楽」を叶える授乳のコツ 世間には「授乳クッションなどを使わずに授乳できるのが理想」と考える人もいます。「外出時や災害時にどうするの?」「クッションがないと授乳できなくなったら困るのでは?」と言われることもあるかもしれません。 もちろん、何も使わずに楽な姿勢で授乳できれば、それに越したことはありません。しかし、ママの体格や胸の形、赤ちゃんの体重や成長のスピードは一人ひとり異なります。さらに、床や椅子といった環境の違い、その日の体調や疲労度に合わせて横になるなど、授乳するシチュエーションもさまざまです。どんな状況であってもママと赤ちゃんの負担を減らし、楽な授乳を実現するために、授乳クッションや足台などの便利な道具を使うのは、ごく自然で大切な工夫です。 そこで今回は、授乳を劇的に楽にするための「授乳クッション」を選ぶうえで、絶対に押さえておきたい大切なポイントについて解説します。 2-1) 反発力(硬さ・へたりにくさ) 授乳クッションに赤ちゃんを乗せたとき、沈み込まない「硬さ」が必要です。1年近く使ってもへたりにくい(変形しにくく、しっかり押し返す力がある)ものを選びましょう。 なぜなら、クッションが赤ちゃんの体重を支えきれないと、結局ママが前かがみになり、赤ちゃんを自力で持ち上げて授乳しなければならなくなるからです。授乳クッションを使っているつもりでも、厚みがなく弾力性が失われたものは、肩や腰を痛め、腱鞘炎を引き起こす原因になります。 選ぶときは、両手で上からギュッと押し込んでみて、沈み込まずにぐっと跳ね返すような弾力があるかチェックしましょう。

クッションの高さを合わせる

2-2) 高さ(厚み) 授乳の際には、ママが背すじを伸ばした状態で、赤ちゃんの口元がママの胸の高さに来るのが理想です。赤ちゃんの口元が胸まで届かなければ高さが足りておらず、逆に胸の位置を超えてしまう場合は高すぎることになります。 適切な高さは、授乳する場所(床・椅子・ソファ)や、ママと赤ちゃんの体格によって異なりますが、実際の授乳場面では「高さが足りていない」ケースが多く見られます。高さが足りないと、ママの姿勢は前かがみになり、背中や肩を丸めて全体に縮こまってしまいます。このような姿勢を続けると、激しい肩こりや首の痛みだけでなく、背中や腰の強い張りを引き起こします。そのうえ、赤ちゃんを手や腕だけで必死に支えることになるため、腱鞘炎を起こすリスクも高まります。 「赤ちゃんが大きくなったら授乳クッションは不要」と言われることもありますが、手や腕だけで抱えるのは大変です。大きくなってからも授乳クッションの上に赤ちゃんを乗せ、ママの手や腕は「添えるだけ」にした方が、お互いにずっと楽になります。 ママの身長に合わせた授乳クッションの高さの目安は、以下の通りです。 • 身長158cm以上: 高さ20〜22cm以上 • 身長158cm未満: 高さ15〜18cm前後 【高さが合わないときの調整のコツ】 • 高さが低い(足りない)場合: 家にある座布団や枕を授乳クッションの下に敷いてみてください。また、ソファや椅子で授乳している場合は、足置き台(フットレスト)に足を乗せて膝の位置を上げるだけでも、高さがぐっと合わさりやすくなります。 • 高すぎる場合: 授乳クッションを少し前へずらすか、ママがソファの背もたれに少しもたれかかるようにして角度を調整してみましょう。

身体へのフィット感を整える

2-3) フィット感(形状・密着度) クッションのフィット感が良いと、腕の力で赤ちゃんを支える必要がなくなります。赤ちゃんが動いたときに、ママとの隙間にずり落ちたり落下したりするのを防ぐことができるため、安全です。その結果、安定して授乳を続けられるようになり、肩こりや腰痛の予防にもつながります。 基本的には「U字型」で、ママのお腹にしっかりフィットするものを選びましょう。 【フィット感を高める調整のコツ】 • お腹とクッションの間に隙間ができる場合: ママの背中や腰の後ろに普通のクッションを挟み、少し前傾姿勢(心地よい範囲で)になるように調整してみてください。 • 足台を活用する場合: 2-2でも触れた「足台」に足を乗せて膝の位置を上げるだけでも、授乳クッションがお腹に密着しやすくなり、身体へのフィット感が格段にアップします。

手首や肘の支えを見直す

3. 見逃すことができない「手首や肘の支え」 授乳クッションの3つの要素(反発力・高さ・フィット感)を満たしていても、授乳時に自分の腕や肘が「浮いている(隙間がある)」状態を放置してしまっている人は多いように思います。 ママ自身の腕や肘が宙に浮いたままだと、手首・腕・肩・首・背中に大きな負担がかかり、腱鞘炎や強い肩こりを引き起こす原因になります。手首や肘がどこかにしっかり支えられている感覚(接地感)を持てるかどうかは、毎日の授乳の楽さや快適さを大きく左右するのです。 授乳支援の現場では、よくバスタオルなどを丸めて手首や肘の下に敷くことがあります。一時的には隙間が埋まって楽になったように感じますが、赤ちゃんの体重やママの腕の重みがかかり続けると、タオルはすぐに潰れて沈み込んでしまいます。これでは結局、自分の筋肉で赤ちゃんを支えることになり、疲労が蓄積してしまいます。 もし、授乳クッションを使っていても手首や肘が浮いてしまう場合は、次のような方法で物理的に隙間を埋め、腕を完全にリラックスさせてあげましょう。 【腕や肘の「浮き」をなくす工夫】 • 小さめのクッションを足す: 授乳クッションとは別に、ある程度反発力のあるクッション(ミニクッションや硬めの枕など)を用意し、浮いている腕や肘の下に挟みます。 • 家具の「ひじ掛け」を活用する: 椅子やソファのひじ掛けに肘をしっかりと乗せるだけでも、腕の緊張が驚くほど抜けます。 また、まだ体力が回復していない産後すぐの時期は、「背中」にクッションを挟んで上半身を預けることも、安定した授乳には欠かせません。もし椅子やソファに座ったときに足の裏が床から浮いてしまうなら、ここでもぜひ「足台」を使ってみてください。片足を乗せるだけでも、骨盤が安定してぐっと姿勢が楽になりますよ。

まとめ

授乳は赤ちゃんに栄養を与えるだけでなく、親子の絆を深めるかけがえのない時間です。とはいえ、1回につき15〜30分、最初の頃は1日に10回以上も繰り返さなければなりません。産後のデリケートなママの身体にとって、これが想像以上に大きな負担になっているのも紛れもない現実です。 だからこそ、ママが工夫して「楽」を追求することは、決して手抜きではありません。これからの長い育児を、ママが笑顔で健やかに続けていくための「何よりも大切な戦略」です。毎日のことだからこそ、便利な道具の力を上手に借りて、まずはご自身の身体をいちばんに守ってください。 これから授乳クッションを選ぶとき、あるいは今ある授乳環境を見直すときは、「赤ちゃんが上手に飲めるか」だけでなく、「私が一番リラックスして、楽に授乳できているか」をものさしにしてみてください。 ママの笑顔と心地よさこそが、赤ちゃんにとっても一番の安心につながっていますよ。

授乳の時間を支えるアイテム

授乳姿勢を見直すときは、ご自身と赤ちゃんの体格、使う椅子やソファに合わせて選んでください。授乳クッションや授乳補助クッションをご紹介します。 ※以下の商品紹介はWhite Lapinによるご案内です。