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「抱き癖の心配はない?」

公開日:2025/04/28 更新日:2025/04/28

「抱き癖の心配はない?」

今日は、「抱き癖は心配ない?」という質問について、日本の文化の違いなどを含めて、お話させていただきます。「抱き癖」という言葉の生みの親のスポック博士は、母親に自信を持たせ負担を軽減させたかったようです。まさか抱き癖をつけないために泣いている赤ちゃんを放置することで、多くの母親が心配するとは思わなかったのでしょう。

なぜ「抱き癖」という言葉が生まれたのか?

「抱き癖」が文献に最初に記されたのは、『スポックマン博士の育児書』(米国の小児科医ベンジャミン・スポック,1946)で、専門用語でも医学用語でもありません。『スポックマン博士の育児書』は世界的なベストセラーになり、日本でも1966年に翻訳本が出版されました。 育児書では、赤ちゃんが常に抱っこを求め、抱っこしないと泣き止まなくなる状態を「抱き癖」と説明していますが、詳しいことは書かれていなかったそうです。当時の現場では、「抱き癖がつくから、(赤ちゃんが泣いていても)必要以上に抱っこしない方が良い」程度のアドバイスだったようです。

欧米では抱き癖がつくほど抱っこしていた?

しかし何かおかしい。そもそも欧米では、早い時期から赤ちゃんを別室で寝かせる文化があります。ハグやキスはたくさんしますが、頻繁に抱っこをするというのはあまり聞いたことがありません。ベビーベッドのなかで過ごさせたり、ベビーカーで外出したりするイメージが強く、そのアメリカで「抱き癖」という言葉が生まれたのに、少し驚きを覚えました。

赤ちゃんと過ごす時間が長い日本の文化

これに対して、日本では長時間赤ちゃんと一緒に過ごし、お世話をする文化があります。古くは子どもを着物にくるみ「おんぶ」する育児行為が一般的でした。子どもを背負えば、両手が空き家事などの仕事ができるので、都合がよかったのでしょう。 高度経済成長期(1955年~)に入り、母親が育児に専念できる環境が整ってくると「おんぶ」をする人が減り、「抱っこ」をする人が増えていきました。抱っこに変わる前は、「おんぶ」が主流でしたので、「抱き癖」を心配するほど抱いていなかったと思います。それに「おんぶ癖」という言葉は聞いたこともなく、誰も心配していなかったようです。 実際に、当時の母子手帳には、「子どもが泣いたらよく原因を確かめましょう。泣いたからといって、すぐお乳を与えたり、抱いたり、おぶったりするのはよくないことです。」と書かれ、「抱き癖」を注意する言葉はありません。

アメリカで抱き癖という言葉が生まれた背景

元に戻って、「抱き癖」という言葉が生まれた背景について考えてみましょう。当時のアメリカでは、工業化・都市化が進み、職と住が分離し、核家族が増えました。女性は家庭のなかで孤立するも、1人で家事・育児の全責任を負わなければなりませんでした。家庭と職業の二重の負担が生じていたのです。今の日本の母親がおかれている状況に似ています。 スポック博士が「抱き癖」を提唱した背景には、母親に自信を持たせ負担を軽減させようと意図があったとの指摘もあります。スポック博士の育児法は、寛容な育児法と言われる所以です。そう考えると昼夜の別なく、赤ちゃんを抱っこして疲労困憊になっているママには、「抱き癖」というおまじないが有効だったかもしれません。ただ全てを親に依存しなければ生きていけない赤ちゃんに対して、自立心を育てるために抱っこしないというのは、道理に合いません。

抱き癖の心配はない?

最初の問いに戻って、「抱き癖の心配はない?」のでしょうか。 1983年の母子手帳には、「抱き癖がつくのではないかという心配より、…中略…もっとも大切なことは母と子の直接的なふれあい。抱きたいと思ったら抱いていいのです。」と書かれています。その後、「泣き止まない時は抱っこしてあげましょう。抱き癖がつくと心配しなくていいのです。」とか、「泣いている赤ちゃんを抱きたいと思いながらがまんするのもおかしな話。抱くことで泣くのが少しでもおさまるのであれば、抱いてあげましょう。」と修正されていきました。つまり、「抱き癖」は赤ちゃんの泣き対策としての抱っこが習慣化することへの注意喚起であったように思います。
「寝かしつけでは、泣いてもすぐ抱っこせず見守りましょう」
こう考えると、赤ちゃんの寝かしつけでは、「抱き癖」を考えてもよいかもしれません。なぜなら、寝入りばなは浅い睡眠がほとんどで、赤ちゃんに触れ、刺激することで、寝つきが邪魔してしまうからです。皆さんも寝付けずに苦しんでいるときに、横からごちゃごちゃ言われると、うるさいと思ってしまうかもしれませんね。赤ちゃんは話せないので、大きな声で泣くという夜泣きのループに落ち込んでしまうのです。 「泣き寝入り」という言葉は、‘不満・不服のままあきらめる’と聞こえがよい言葉ではありませんが、子どもが‘泣きながら眠る状態を表しています。赤ちゃんが泣いてもすぐに抱っこせず、泣き寝入りするのを見守りながら、上手に眠れるようになることを応援しましょう。赤ちゃんとの信頼関係には影響しません。そして、親として赤ちゃんの泣きに向き合う力を高めてください。
更新日:10/06(09/29〜10/05集計)