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仏料理人が語るスケップシュルト | ポン・ヌフ 平田恭之氏

公開日:2025/12/24 更新日:2026/01/23
日差しが照りつける今年の8月、私たちはひとつの鋳鉄ブランドのストーリーを探しに、岡山県倉敷市を訪れた。 探していたのは、100年以上にわたり世界の料理人に選ばれ続けてきた SKEPPSHULT(スケップシュルト)という道具の“本質”である。 白壁の蔵が立ち並ぶ倉敷は、歴史と文化、自然が穏やかに調和した街だ。 かつては江戸幕府の直轄地として栄え、現在も繊維産業やジーンズの街として知られている。和の風景の中で、洋の歴史ある道具を深く掘り下げる——今回の取材に、これほど相応しい街はないだろう。 訪れたのは、倉敷市郊外に佇むフランス料理店「LE PONT NEUF(ル・ポン・ヌフ)」。 来年40周年を迎えるこの店は、「人生に寄り添うレストラン」でありたいという想いのもと、肩肘張らずに本格的なフランス料理を楽しめる場所として、多くの人に親しまれてきた。 幹線道路沿いに現れる煙突のある建物。一歩足を踏み入れると、レンガの暖炉と重厚な梁に囲まれた、温もりある空間が広がる。 その厨房で、長年料理人たちに寄り添ってきた道具のひとつが、SKEPPSHULTの鋳鉄調理器具である。

職人が惚れ込む「道具の在り方」

今回は、オーナーシェフの小野氏が見守る中、ポン・ヌフでスーシェフ(副料理長)として活躍する 平田恭之氏 にお話を伺った。料理界に飛び込んでわずか4年でこの立場に就いた、注目の若手料理人である。 休日には積極的に食べ歩きを行うなど、その探究心と勉強熱心さは小野オーナーも太鼓判を押すほど。平田シェフについて語る眼差しからは、厚い信頼が感じられた。 意外だったのは、その経歴だ。工業高校卒業後、宮大工として働いていたという異色の背景を持ち、そこから料理の道へ転身。素材と向き合い、道具を使いこなし、仕上げるという姿勢は、大工時代から培われた職人気質そのものだ。 この両氏にSKEPSHULTを通じて道具について語ってもらったことは、とても有意義で貴重な機会であったことは想像するには容易であろう。

プロの料理人にも選ばれる理由

SKEPPSHULTは1906年にスウェーデンで創業し、北欧では唯一の100年以上続く老舗の鋳鉄の調理道具を製造している会社である。 その製造には北欧らしく水力や風力などの自然エネルギーのみを使用し、素材も厳選な審査で選ばれている純鉄に拘り、そのひとつひとつが鋳型に流し込み成形する昔ながらの手作業により製造されている。 その重さは他のブランドと比べても実に重く、それが密度の違いで鋳鉄の最大の特徴である蓄熱性の高さと耐久性の裏付けでもあり、その性能の高さは他とは一線を画しミシュランシェフなどプロフェッショナルも使用する拘りの逸品である。 世代を越えて受け継がれる道具であり、まさに一生モノと言える。

料理で実感する鋳鉄の力

この日、平田シェフが選んだのはヤーン キャセロール、フィッシュパン、オーバルキャセロール。 シーフードリゾットは、焦げ付きなく、米一粒一粒に熱が均一に入り、驚くほど滑らかな仕上がりに。スズキのポワレは、皮目は香ばしく、身はふっくらと。牛頬肉の赤ワイン煮込みは、形を保ったまま驚くほど柔らかい。 どの料理も共通していたのは、素材の味が際立つこと。鋳鉄が“料理を主張しない”からこそ、素材と技が前に出る。 そして仕上がった料理は、鍋ごとテーブルへ。温かさを保ち、見た目の迫力も演出する——それもSKEPPSHULTならではの魅力だ。
SKEPPSHULTの特徴である高い蓄熱性は、調理中のゆとりにもつながると平田シェフは教えてくれた。 鋳鉄鍋は調理中に放置が可能なことで、それ以外の作業を行うことが出来て、結果的に忙しい時には重宝するとのこと。家庭の料理でも、同様にとても有効である。 実際に、シェフは3種類の料理を同時進行で作っており、どれも絶妙なタイミングで仕上がっていた。
リゾットを火にかけ、その傍らで調理を進めていたのがこちらの「夏野菜とスズキのポワレ」である。 白身の魚を手際よく捌き、予熱していたフィッシュパンに皮目を乗せて焼き目をつける。素材を乗せた際にも、温度が下がらない為、その焼き目も実に鮮やかでありパリッとしている。 その後、温度を調整してひっくり返して焼いていくのだが、時間をかけて火を通すことでふっくら仕上がる。 この作業も通常のフライパンであれば目を離せず、少し間違えば焦げてしまうし、この彩りの野菜達も温度が上がってしまうと、色が褪せて味も変わってしまうという。 じっくりと熱が入ることで、見た目はもちろん、ジューシーさと素材の味が凝縮されるのである。
最後に振りかけたスパイスは、コリアンダー・フェンネルのシード・ホワイトペッパーをホールで入れて、スパイスミルで挽いていく。愛らしいフォルムで手なじみ良く握りやすい。鉄の重さと独特な凹凸も相まって、絶妙な引き具合でスパイスの良い香りが広がっていた。
そして、最後の料理がこちら、「国産牛頬肉の赤ワイン煮込み」である。 オーナーの小野シェフの得意料理で、目の前で作るのには若干の緊張があるとのこと。 硬い頬肉は形が崩れることはないのに驚くほどに柔らかくジューシーであり、人参は食感を保ちながらも甘みが強調されていた。 じっくりと均一に全方向から熱が入ることで、高温にし過ぎずともじっくり仕上がる。まさに鋳鉄ならではの効果であろうか。仕上がった後も蓄熱の良い鋳鉄は、保温が効くためテーブルに乗ってもしばらくは温かいままであったのが印象的であった。 そう、このどちらの料理も、鍋ごとテーブルに運ばれるのである。これらの絶品料理を重厚感ある鋳鉄の鍋達がさらなる迫力を演出するのである。 彩りも鮮やかで、温かさもキープされ、見た目も美しく、そして、どの料理も唸るほどに美味しかったことはいうまでもない。 このようにして、鋳鉄であるスケップシュルトはプロの料理人にも使われており、その能力を遺憾無く発揮しているのである。

一生使うからこそ、育てる道具

それでは、一般の家庭での料理にはどうであろうか。 この鋳鉄の鍋というと、洗剤が使えなことや、錆のことが気になり、メンテナンスなどの手間がかかるイメージが強いというのはよく聞く言葉である。 鋳鉄は手入れが大変、というイメージを持つ人も多い。しかし実際には、 ●お湯とブラシで洗う ●火にかけて乾かす ●薄く油を塗る この工程を繰り返すことで、油が馴染み、ブラックポット(酸化鉄の被膜が形成され、光沢のある漆黒色に変化した状態)へと育っていく。使い込むほどに錆びにくく、焦げ付きにくくなる。 片付けについて伺うと、お二人から返ってきた言葉は「感謝」だった。仕事に欠かせない道具だからこそ、常に感謝をしながら全ての道具や厨房のメンテナンスを行うと言う。 道具にはそれぞれクセがあり、長く使うことで身体が覚え、安定したパフォーマンスにつながる。 愛着を持って使うことが、料理への向き合い方そのものを高めてくれるのだ。 最後に平田シェフにとって道具とは何かを尋ねると、返ってきた答えはこうだった。 「幼少の頃におもちゃ箱に入っていたおもちゃ達のような感覚・・・、大切なもの、宝物」 宮大工を経て道具と向き合ってきたからこそ、その言葉には確かな重みが感じられた。

人生に寄り添う道具として

今回の旅で出会ったSKEPSHULTのストーリー。それは“人生に寄り添うレストラン”「LE PONT NEUF(ポン・ヌフ)」での絶品料理と、お客様への温かく丁寧なおもてなし。そして、それを生み出す道具に対する愛情であった。 その大切な道具と成るに値する料理道具、それがSKEPSHULTの鋳鉄の道具達であり、その実力と素晴らしいプロダクトであることに改めて気付かされた旅であった。 皆様もこの機会に本当の一生モノと共に、日々の暮らしを温かく豊かにしてみてはいかがでしょうか。

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