約20年前、当店は世界で初めて研磨したチタン製品を商品化しました。チタン雑貨の店としてお玉やスプーンを販売し始めてしばらく経った頃のことです。当時、チタンの仕上げは表面がややざらついたマット仕上げが一般的で、貴金属のように輝くチタンは非常に珍しい存在でした。そんな中、実際にご購入いただいたお客様や、雑誌掲載をご覧になったお客様から「島田工房で指輪の仕上げはできないか」「このスプーンと同じように指輪を磨いてほしい」といったお問い合わせをいただくようになったのです。
チタン製の指輪やアクセサリーを扱う店は国内外でも数えるほどしかなく、現在のような金属アレルギーに対応したメッキ処理もない時代でした。そのため、金属アレルギーを持つ方は指輪やネックレスを着けることを諦めるのが当たり前でした。金属アレルギーに対応した素材として比較的入手しやすかったのは純金(K24)でしたが、純金は非常に柔らかいため変形しやすいという難点がありました。また、この頃から医療用メスやピンセットに使われるサージカルステンレスが市場に出始めました。
指輪の製作にあたり、オートクチュールジュエリーやオーダーメイドジュエリーを手掛ける幼馴染のジュエリー職人に相談を持ちかけました。長年指輪作りをしてきた彼は、金属アレルギーのお客様が年々増えていることに以前から気づいており、「現在販売されている純金や純銀はメンテナンスが煩雑で、気軽に身に着けられない」と感じていたそうです。もっと気軽に身に着けられる本格的な金属アレルギー対応の指輪を作れないか。ジュエリー職人とチタン屋の二人は、知恵を出し合い試作を始めることになりました
幾度もの試作を重ね、辿り着いたのは、人工関節や人工骨に使われる素材を削り出し、一般的なジュエリーと同様に研磨で仕上げるという方法でした。2001年、まずシンプルな平打ちリングと甲丸リングをホームページに掲載したところ、私たちの想像をはるかに超えるほど多くのお客様が金属アレルギーに悩んでおり、大きな反響をいただきました
お客様のリクエストに応えるうちに、商品ラインナップは雑貨よりもチタンアクセサリーが中心となり、いつの間にか私たちは「チタンの指輪屋さん」と呼ばれるようになっていました。現在も、ジュエリー職人である彼は、新しい製法を模索したり、互いに刺激し合える頼もしい仲間です。