昆布おじさんの独り言【北海道の海で、今起きていること】
公開日:2026/09/04 更新日:2026/10/15梅雨が明けて、本格的な夏がやってきました。
夏休みや花火大会を楽しみにされる方も多いでしょう。
でも、僕ら昆布屋にとって夏は、一年で一番気が張る季節です。
北海道で昆布漁が始まるからです。
今年ほど、北海道の浜から届く電話を気にしながら夏を迎えた年はありません。
「今年も海水温が高い。」
「昆布の育ちが悪い。」
「雑海藻が増えている。」
そんな声が、あちこちの浜から届いています。
今日は少しだけ真面目なお話になりますが、今、北海道の海で起きていることを、昆布屋として正直にお伝えしたいと思います。
近年、北海道沿岸では海水温の上昇が続き、「磯焼け」と呼ばれる現象が各地で問題になっています。
海藻が育ちにくくなり、昆布が広がっていた岩場から海藻が少しずつ姿を消してしまう現象です。
さらに、水温が高くなるとウニなどの動きも活発になり、芽吹いたばかりの若い昆布が食べられてしまうこともあります。
その結果、かつて昆布がゆらゆらと揺れていた海が、海藻の少ない岩場へ変わってしまった場所もあります。
昆布屋になって55年。
北海道の海を見続けてきましたが、ここ数年ほど海の変化を強く感じたことはありません。
自然は、確かに変わり始めています。
「昆布が少ない。」
「値段が上がる。」
そんな話だけなら簡単です。
でも、僕が一番伝えたいのは、その向こう側にいる人たちのことです。
まだ夜も明けきらない海へ船を出し、波や風と向き合いながら昆布を採る漁師さん。
一枚一枚丁寧に干し、天候を見ながら乾き具合を確かめる浜の皆さん。
その昆布は選別され、多くの人の手を渡って、ようやく僕たち昆布屋へ届きます。
そして、皆様の食卓へ運ばれていきます。
昆布は工場で作るものではありません。
自然が育て、人がつないできた「海の恵み」です。
だから僕は、海の変化も、その裏側にある人の努力も、皆様に知っていただきたいと思っています。
これからは、「たくさん使う」よりも、
「最後まで美味しくいただく」
そんな時代になるのかもしれません。
僕が「だしを取った昆布も捨てんといてください」と言い続けているのも、最初から細切りにした「昆布革命」を作ったのも、
限りある海の恵みを、一ミリたりとも無駄にせず、美味しく味わっていただきたいという思いからです。
炊き込みご飯に。
佃煮に。
おにぎりに。
細かく刻んでサラダに加えても美味しい。
少しの工夫で、昆布は最後まで美味しく食べ切ることができます。
その一口一口が、昆布を大切にする心につながっていくと、僕は信じています。
自然は年々厳しくなっています。
それでも漁師さんは海へ向かいます。
浜では少しでも良い昆布を育てようと、今日も努力が続けられています。
だから僕も、その覚悟に負けない覚悟で昆布と向き合います。
自分の目で見て。
自分の手で触れて。
自分が「これは美味しい」と納得した昆布を、皆様へお届けし続けたい。
北海道の海を守ること。
日本の昆布文化を未来へつないでいくこと。
その小さなお手伝いをすることが、昆布屋としての僕の使命だと思っています。
皆様の食卓に並ぶ一枚の昆布。
その一枚の向こうには、北海道の海があり、漁師さんの汗があり、多くの人の想いがあります。
そんなことを、今日だけは少し思い出していただけたら、昆布屋としてこれほど嬉しいことはありません。