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子どもが耳をふさぐのは、なぜ? 聴覚過敏と、音のつらさの話

公開日:2026/09/15 更新日:2026/10/10

子どもが耳をふさぐのは

耳栓専門店ハレトケの店長、石川レンです。 花火大会に行ったとき、お子さんが両耳をぎゅっと押さえていたこと、ありませんか。 上の子は「行きたい!」と言うのに、下の子だけが「行きたくない」と言う。 「なんで? みんな楽しいのに」 責めたつもりはなくても、その一言で、子どもは追い詰められてしまうことがあります。 ────────────── 実は、私の子どももそうでした。 最初は、理由が分かりませんでした。喜ぶと思って連れて行った場所で、なぜ嫌がるのだろう、と。 耳をふさぐのには、理由があることがあります。

それは、わがままではない

聴覚過敏という言葉があります。 多くの人が問題なく過ごせる音の大きさで、つらさや痛みを感じる状態のことです。 大事なのは、音の大きさそのものではなく、その音をどう受け取るかの違いだということです。 わがままでも、泣き虫でも、しつけの問題でもありません。 ────────────── ここで、ひとつお伝えしたいことがあります。 耳をふさぐ子が、みんな聴覚過敏というわけではありません。 音のつらさは、耳の病気が原因のこともあります。疲れているとき、不安なときにも起こります。 「耳をふさぐから発達障害かも」と急いで結びつけないでください。その逆も同じです。

聴力検査では分かりません

健診や耳鼻科で受ける聴力検査は、「どれくらい小さい音まで聞こえるか」を調べる検査です。 聞こえすぎてつらいかどうかは、この検査では分かりません。 実際、聴力に異常がないのに音がつらいという方について、日本の耳鼻咽喉科でも研究が行われています。 (Audiology Japan 2009年) 「検査では問題なかったので、気のせいだと思っていました」 そうおっしゃる親御さんに、何度もお会いしました。 気のせいではありません。

学校の中の、つらい音

音がつらい子にとって、学校は、つらい音の多い場所です。 ────────────── 教室のなかで ────────────── ・椅子を引きずる音 ・戸がバタンと閉まる音 ・隣の席の咳やくしゃみ ・給食の時間のざわめき ・放送やアナウンス ────────────── 行事のなかで ────────────── ・運動会のピストルや笛 ・避難訓練のベル ・体育館に響く声 ────────────── 発達障害のある子の音環境を調べた研究では、改善してほしい場所として「学校」が最も多く挙げられました。 (日本建築学会技術報告集 2020年/有効回答766件) どれも、学校では日常です。でも、それが毎日続くとしたら。 「学校に行きたくない」の理由に、音が含まれていることがあります。

気づきのサイン

専門家が挙げている気づきのサインです。 ────────────── ・特定の音がすると、とっさに耳をふさぐ ・掃除機の音が苦手 ・赤ちゃんの泣き声が苦手 ・スーパーの騒音が苦手 ・救急車のサイレンやバイクの音にいち早く気づく ────────────── (LITALICOジュニア 監修:井上雅彦 鳥取大学大学院教授) ほかに、こんな様子もあります。 ・突然の大きな音に人一倍驚く ・人が多い場所を嫌がる ・出かけた後、ぐったり疲れている ・ざわざわした場所では呼びかけが耳に入らない 最後のひとつは、聞こえていないのではなく、たくさんの音の中から必要な音を拾い分けるのが難しいためだと考えられています。

我慢させるかわりに

足が不自由な人に、「がんばって階段を上りなさい」とは言わなくなりました。 スロープをつくり、エレベーターをつけました。 困っているのはその人ではなく、階段しかない建物のほうだった。そう考え方が変わったからです。 音も同じだと思っています。 「我慢しなさい」ではなく、音の大きさを下げる道具を渡す。 イヤーマフは、その子を変えるための道具ではありません。環境の側を変えるための道具です。 メガネと同じです。目が悪いことを我慢させるかわりに、レンズを一枚、渡しています。

学校に持っていっていい

「学校に持っていってもいいのだろうか」 そう迷われる方が多いです。 先生に「何を聴いているの、外しなさい」と言われた、という話も聞きます。 知らなければ、音楽を聴いていると思われても仕方がありません。 ────────────── 2024年4月から、お店や会社などの事業者にも、合理的配慮の提供が義務づけられました。 内閣府が出している事例集には、聴覚過敏を理由に教室内での耳栓の使用や別室への移動を認めた実例が載っています。 (内閣府 合理的配慮の提供等事例集/令和5年4月) 机や椅子の脚に緩衝材をつけて音を減らした例もあります。 ────────────── 配慮の対象は、障害者手帳を持っている人に限られません。これは国の基本方針に書かれています。(令和5年3月14日 閣議決定) 先生が知っていれば、「外しなさい」の一言は起きなかったかもしれません。

どこに相談できるか

診断を急ぐ必要はありません。 ただ、音のつらさの裏に耳の病気が隠れていることがあります。 まず耳鼻科で診てもらうことがすすめられています。 (日本耳鼻咽喉科学会会報 2017年) ────────────── 相談できるところ ────────────── ・1歳6か月児健診、3歳児健診  市町村が行っています ・5歳児健診  国のマニュアルに、療育相談をすすめる例として感覚過敏が挙げられています ・こども家庭センター  2025年5月時点で全国の71.2%の自治体に設置されています ・発達障害者支援センター  すべての都道府県と指定都市にあります。ご家族からの相談も受け付けています ────────────── 「これは相談することなのかな」と迷う段階で大丈夫です。

よくあるご質問

【Q】イヤーマフをつければ治りますか? いいえ。イヤーマフはつらい音の大きさを物理的に下げる道具です。治療のための道具ではありません。 音がつらい場面を過ごしやすくするために使います。 【Q】何歳から使えますか? 2WAYベビーイヤーマフは生後3ヶ月から、子ども用イヤーマフは3歳からを目安にしています。 くわしくは「イヤーマフは何歳から?」の記事に書いています。 【Q】全部の音が聞こえなくなりませんか? いいえ。つらい音の大きさを下げながら、先生の声や呼びかけは聞こえるように設計しています。 全部を遮ってしまうと、教室にいる意味が薄れてしまうからです。 【Q】嫌がってつけてくれません 無理につけさせないでください。静かな家の中で、短い時間から試すのがおすすめです。 慣れるまで1〜2週間かかったというお話をよく聞きます。

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最後に

音のつらさは、見た目では分かりません。 だから、まわりの人は「うるさいくらい我慢できる」と思ってしまいます。 「我慢しなさい」は、いちばん伝わらない言葉です。 耳をふさいでいる子がいたら、その子はいま、自分で自分を守っています。 イヤーマフが、メガネくらい当たり前の風景になってほしい。 そう思って、この店をやっています。