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母乳や育児にも影響する、妊婦・産後ママの熱中症対策

公開日:2026/08/24 更新日:2026/08/25
本記事は佐藤珠美先生によるコラムで、「乳幼児のスキンケア」「寝かしつけ」「抱っこ」など、産後のママが抱えやすい悩みに寄り添いながら、毎日の育児に役立つ情報をわかりやすく発信しています。

9月の隠れ脱水に気をつけて!

【母乳や育児にも影響する、妊婦・産後ママの熱中症対策】 9月に入ると涼しい風を感じられたのは、20〜25年ほど前の話。今では10月になっても残暑が厳しく、11月に入ってようやく秋らしさを感じられるくらいです。そのため、秋を迎えてもまだまだ熱中症への対策が必要です。 6月頃から続けてきた熱中症対策ですが、「熱中症対策には慣れている」とか「もう秋だから」と侮ってはいけません。春から蓄積された夏の疲れで体力が落ちているうえ、少し涼しくなると喉の渇きを感じにくくなります。その結果、無意識に水分補給が減り、脱水症を引き起こしやすくなるからです。誰もが引き続き対策を徹底する必要がありますが、なかでも特に注意が必要なのが「妊婦さん」と「産後の女性」です。今回は、妊娠期や産後の各時期における熱中症の特徴と、具体的な対策について一緒に考えてみましょう

なぜ、妊婦、産後の女性の熱中症対策なのか

熱中症の統計を見ると、高齢者や男性の発生率が高いことが知られています。しかし実は、若い女性、なかでも「妊婦さん」や「産後の女性」も非常に熱中症のリスクが高いのです。 理由①:筋肉が少なく、水分を体にため込みにくい 人の体において、水分を蓄える最大のタンクは「筋肉」です。筋肉には約70%もの水分が含まれていますが、一方で「脂肪」には10〜30%程度しか水分を蓄えられません。そのため、男性に比べて筋肉が少なく脂肪が多い女性は、もともと体内の水分タンクが小さく、脱水症を起こしやすい体質と言えます。 理由②:ホルモンバランスによる水分量の激しい変化 女性の体は、月経周期(ホルモンバランス)によって体内の水分量が大きく変動します。排卵後から生理前は、妊娠に備えて体内に水分や塩分をため込もうとするため、むくみや1〜2kgの体重増加を実感する方も多いでしょう。しかし、生理が始まると今度はため込んだ水分を一気に排出しようとするため、尿の回数や量が増えます。この急激な変化の時期も、脱水のリスクが高まります。 理由③:赤ちゃんを守るための「皮下脂肪」が熱をこもらせる 妊婦さんや産後の女性は、さらに特有の条件が加わります。女性の体は赤ちゃんを守り、出産時のエネルギーや母乳の原料にするために、妊娠・出産を経て2〜4kgもの皮下脂肪を蓄えます。皮下脂肪には体温を保つ役割(断熱材の役割)がありますが、裏を返せば「体内の熱を外に逃がしにくい」ということでもあります。その結果、体に熱がこもりやすく、熱中症のリスクが上がってしまうのです。 これらの理由から、女性、特に妊娠中や産後の女性は熱中症に対して人一倍の注意が必要です。

生理、妊娠期、産後の各時期の熱中症の特徴

1. 生理前後:激しい体温変化と水分の出入り 生理前は女性ホルモンの影響で「基礎体温」が上昇し、体に水分をため込みやすくなります。しかし、生理が始まると一転して体温が下がり、体は冷えやすくなります。同時に、ため込んでいた水分を排出しようと尿の量や回数も増えるため、体内の水分バランスが急激に変化します。 「暑い」「寒い」「むくむ」「尿が増える」といった、生理周期に伴う目まぐるしい身体の変化に合わせた、きめ細やかな水分補給と体温調節が必要です。 2. 妊娠中:血液量は1.5倍に!胎児への影響も 妊娠すると、お腹の赤ちゃんに栄養を届け、出産時の出血に備えるために、お母さんの血液量は最終的に妊娠前の約1.5倍まで増加します。増えた皮下脂肪の影響で、妊婦さんの体は常に熱がこもりやすい「うつ熱(うつねつ)」の状態にあります。そのため脱水に傾きやすく、お母さんだけでなく、お腹の赤ちゃんの成長に影響を及ぼすこともあります。さらに、つわりによる嘔吐が続くと、体内の塩分(電解質)バランスが崩れて熱中症の症状を悪化させるため、いつも以上の厳重な対策が重要です。 3. 産後:自律神経の乱れと「母乳」による水分不足 出産が終わると、妊娠中に蓄えていた余分な水分が不要になり、産後数日の間に大量の汗として排出されます(これを「褥汗:じょくかん」と呼びます)。これは正常な生理現象です。さらに、夜間の頻繁な授乳による寝不足は自律神経を乱し、体温調節機能を低下させます。また、母乳の出が悪く相談に来られるお母さんのなかには、ご自身の水分不足が原因であるケースが少なくありません。詳しくお話を伺うと、母子ともに尿の回数が少なく、色も濃い状態になっています。育児に追われて喉の渇きに気づかないお母さんも多いですが、しっかり水分をとることで母乳がサラサラとよく出るようになり、母子ともに尿の量や色も改善します。授乳中の方は、わが子のためにも1日1.5〜2リットルの水分補給を意識し、「授乳の前後」や「寝る前」に必ずコップ1杯の水を飲む習慣をつけましょう。
4. 産後の月経再開と育児環境のリスク 産後に生理が再開すると、出血によって血液や鉄分が不足し、さらに脱水症状を起こしやすくなります。産後の健康診断などで貧血を指摘された方は特に注意が必要です。また、「脱水」によるだるさや頭痛は、生理に伴う不調(PMSなど)と似ているため、熱中症のサインを見逃してしまう危険性もあります。

【注意】赤ちゃんとの密着にも気をつけて

体温が高い赤ちゃんを長く抱っこすることは、お母さん自身の体温を上昇させ、熱中症リスクを高める原因になります。暑い時期は、抱っこ以外の遊び方のバリエーションを増やしたり、長く抱っこしたりする代わりに、座って「ハグ」をする回数を増やすなど、触れ合い方を工夫してみましょう。ハグでは足りないと心配する必要はありません。ハグは、お子さんの副交感神経を活性化させてリラックス状態を導く科学的な効果が認められています。ママやパパのハグは、赤ちゃんにとって最強の癒しです。

熱中症と脱水対策

妊婦さんや産後の女性が行う熱中症・脱水対策の基本は、一般的な方法と同じです。そこに、この時期ならではの注意点を少しプラスして、今日からできる具体的な工夫をご紹介します。 •エアコンを賢く使って、適切な室温を保つ お腹の赤ちゃんや生まれたばかりの赤ちゃんのためにも、室温を快適に保つことは必須です。電気代が気になるときは、以下の工夫を組み合わせてみましょう。 ①自動運転にする。微風で運転し続けるより、自動運転の方が効率よく冷えて節電になります。 ②扇風機やサーキュレーターを併用する:部屋の空気を循環させると、設定温度が高めでも涼しく感じられます。但し、赤ちゃんに直接風邪を当てないようにしましょう。 ③こまめにフィルター掃除をする(お子さんは別室に):目詰まりを防ぐだけで、エアコンの効きが良くなり電気代の節約になります。赤ちゃんのアレルギー予防にもつながります。 ④遮光カーテンやサンシェードを使う:直射日光を遮ることで、室内の温度上昇を大幅に抑えられます。 •「こまめな水分補給」と「食事でのミネラル摂取」をセットにする 妊娠中や授乳期は、とにかく意識してこまめに水分をとることが大切です。ただし、水やお茶ばかりを大量に飲んでいると、汗と一緒に失われたミネラル(塩分など)が薄まり、かえって体調を崩す(夏バテや熱中症の)原因になります。対策として、毎日のバランスの良い食事を心がけましょう。特に食事の際、お味噌汁やスープなどを一緒に飲むと、水分と塩分、そして栄養を効率よく同時に補給できるのでおすすめです。 機能性アイテムを活用して、上手に体温をコントロールする 赤ちゃんの授乳や長時間の抱っこは、母子ともに熱がこもり(うつ熱)、どうしても体温が上がりやすくなります。そんなときは、便利なアイテムに頼りましょう。接触冷感や吸汗速乾(きゅうかんそっかん)などの高機能インナーを着たり、首周りに濡れタオルや冷却グッズ(ネッククーラーなど)を巻いたりするのが効果的です。
【お肌がデリケートな方へのアドバイス】 妊娠中や産後は肌が敏感になりやすく、化学繊維でかゆみが出る(化繊アレルギーなど)方もいます。その場合は、綿やシルクなどの天然素材の下着を1枚着た上で高機能インナーを重ねたり、風通しのよいゆったりした服を選んだりしてみましょう。また、かいた汗をこまめに拭き取るだけでも、肌への刺激を優しく和らげることができます。汗を拭いた後は、ローションタイプの保湿剤をつけると肌の乾燥を防いでくれます。

まとめ

今回は、室内での対策を中心に、妊娠中や産後の方が特に知っておきたい熱中症・脱水対策についてご紹介しました。 近年の厳しい猛暑のなか、大切な命を守りながら行う子育ては、体力的にも精神的にも本当に大変なことです。日々育児を頑張っているご自身の体をまずは一番に労り、優しくしてあげてくださいね。 ずっと家の中にこもっていると息が詰まってしまうときは、赤ちゃん連れでもお出かけしやすい、近所のエアコンが効いた子育てサロンなどの公共施設や商業施設を頼ってみましょう。最近では、自治体が指定する涼み処(クーリングシェルター)なども増えています。事前に近くの避難場所を調べておき、ときには上手に息抜きをしながら涼しい場所へ足を運んでみてください。 最初にお伝えしたように、現代の暑さは10月頃まで長く続きます。少し涼しくなってきたと感じる秋口こそ、油断からくる「秋疲れ」や隠れ脱水に移行しないよう、もうしばらくの間、心地よいペースで熱中症対策を続けていきましょう。
更新日09/13(09/06〜09/12集計)