妊娠を望むとき、多くの方が気にするのは、排卵の有無やホルモンバランス、子宮や卵巣の状態ではないでしょうか。
もちろんそれらはとても大切ですが、実はもうひとつ、見落としたくないのが「腟内環境」です。
腟の中にはさまざまな菌が存在し、ふだんは乳酸菌が優勢であることで、弱酸性の環境が保たれています。
このバランスが崩れ、乳酸菌が減ってほかの菌が増えた状態が「細菌性膣症(BV)」です。おりものやにおいの変化として気づかれることもありますが、無症状のことも少なくありません。だからこそ、妊活中のうちから知っておく意味のあるテーマです。(CDC:the U.S. Centers for Disease Control and Prevention )
細菌性膣症は、単なるデリケートゾーンの不快感にとどまらず、妊娠中には前期破水や早産との関連が指摘されています。
一方で、「見つけたら全員が同じように検査や治療を受ければよい」と単純に言えるものでもなく、症状の有無や早産リスクによって考え方が変わります。
今回は、妊娠を望む女性に向けて、細菌性膣症とは何か、なぜ早産との関連が話題になるのか、妊娠中の治療はどう考えるのか、そして妊活中からできる日々のケアについて、整理したいと思います。
細菌性膣症が注目される大きな理由は、妊娠中の経過との関連です。CDC(the U.S. Centers for Disease Control and Prevention )は、妊娠中の症候性BVが、前期破水、早産、子宮内感染、産後子宮内膜炎などの有害転帰と関連するとしています。
つまり、妊娠中に症状のある細菌性膣症がみられた場合には、「よくあるおりものトラブル」と軽く考えず、きちんと評価・治療することが大切だということです。
この関連を示す研究は以前から積み重ねられており、2003年のメタ解析では、細菌性膣症があると早産リスクは2倍超に高まり、特に妊娠16週未満や20週未満の早い時期に認められた場合に、より強い関連が示されました。
また、自然流産との関連も報告されています。すべての妊婦さんに同じように当てはまるわけではありませんが、「腟内環境の乱れが妊娠経過に無関係ではない」ことは、妊活中の方にとって知っておく価値のある情報です。(PubMed)
ただし、ここで誤解したくないのは、関連があることと、全員を一律に調べて治療すれば早産を防げることは別、という点です。USPSTF(米国予防医療専門委員会)は、症状のない妊婦で、早産リスクが高くない人に対するBVスクリーニングについて、早産予防の利益はないとして推奨していません。
過去に早産歴があるなどハイリスクの方では結論が分かれており、現時点では十分なエビデンスがそろっていないとされています。
つまり、実際の医療では「症状があるか」「既往があるか」「妊娠経過に気になる点があるか」を踏まえて、個別に判断することになります。