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【コラム】ちょっと真面目な田んぼの話|田んぼの価値ってお米だけ?

公開日:2026/08/21 更新日:2026/08/21
私(店長)の父は、美濃加茂で米を作っています。 そして私自身、中山間地の小さい田んぼで、手植え手刈りで米を作っています。 作り手でもあり、売り手でもあり、お米を食べる消費者でもあります。 そんな身なので、今年の米価をめぐるニュースを見ながら、色々と考えてしまいます。 米の価格、生産者の収支、お米を食べる人の生活費負担…。 水田稲作について議論されるとき、そのほとんどは「食糧としての米」の価値に終始しています。 ですが、食糧生産は田んぼが持つ価値の「一部」です。

市場原理では「中山間地」から消えていく

田んぼの価値を「米の生産性」だけで測ると、価格は需要と供給のバランスで決まってしまいます。 今の日本政府もそれを、方針としています。 そうなると、次のような流れが生まれます。 ・平坦で広大な農地: 大型機械で効率よく生産できるため、価格優位になって続けられる ・中山間地の棚田・小規模農地: 手間がかかり生産効率が悪いため、真っ先に放棄される 経済合理性だけで見れば、これは「自然な淘汰」ですね。 けれども、その先には、大きな落とし穴があります。

田んぼは「日本を守る巨大なダム」

日本の地形は高い山から海までの距離が短く、非常に急峻です。 勾配35度以上の急傾斜地が12.9%、30-35度の傾斜地が21.2%を占めており、河川も海外に比べて急流が多いです。 自然のままであれば、降った雨は一瞬で海へと流れ出てしまいます。 この急流を食い止め、水を大地に留める役目を大きく担っているのが「国土中に張り巡らされた田んぼと用水路」です。 日本学術会議の2001年の提言によると、大地に水が留まることで、以下のような恩恵が受けられていると評価されています。 ◆治水機能(巨大ダム数基分相当)  豪雨時に水を一時的に蓄え、下流の都市部の洪水を防ぐ ◆地下水のかん養  水がゆっくりと地下に染み込むことで、豊かな地下水脈を育む ◆生態系保全  多様な動植物の住処となる また、日本がこれから力を入れていこうとしている半導体も、豊富で純度が高い地下水があるからこそ、成り立っています。 そして、中山間地の田んぼは上流にあるからこそ、その影響力も大きいのです。 米を食べる人だけでなく、日本に暮らすほぼすべての人が、知らず知らずのうちに田んぼの「公益機能」の恩恵を受けています。

「交付金」だけでは支えきれない現場の実情

もちろん国による「多面的機能支払交付金」や「中山間地域等直接支払制度」といった公的支援が存在します。 しかし、現場のリアルを見つめると、これだけでは限界を迎えています。 1.「地域の共同活動」が前提の制度設計 草刈りや泥上げなどの維持管理を地域住民のボランティア的共同活動に頼る仕組みが多く、超高齢化と過疎化が進む集落では「交付金をもらっても、動ける人がいない」状態に陥っています。 2.インフラ維持に見合わない交付単価 複雑な地形の棚田や水路を維持する労力・費用に対して補填額が十分とは言えず、事務手続きの負担ばかりが重くのしかかっています。 結果的に、「国土保全という巨大な公益サービス」を、現場の農家が米の売上だけでは賄えない分を、身を削る無償労働で支え続けているのが実情です。

「食べる人」と「作り手」だけで負担する?

現在、この国土保全という巨大な公益価値を維持するコストは、「米の作り手の過酷な労働」と「米を食べる人の財布」だけにほとんど依存しています。 この状況には構造的な無理があるように思います。 生活するうえで欠かせないお米は、食べる人としては安くあってほしいと願うのは当然です。 一方で、作り手としても、続けるための正当な対価が必要です。 これからは、受益者ごとの価値と対価を整理したハイブリッドな制度設計が必要だと感じます。 食糧生産への対価は、 お米を食べる買い手が負担する(市場価格)。 国土保全への対価は、その恩恵を受ける国民全体(公的資金・税など)で直接的に支える。 実際に、欧州などでは「環境支払」という形で実現しています。

終わりに

取り留めのない話のようにも感じるかもしれません。 ですが、作り手と買い手の分断が、令和の米騒動の根幹にあると思います。 作り手、買い手、そしてそのつなぎ役を担う売り手も含めて、相互に理解を深めながら世論を形成していくことが、持続的な水田環境・水資源を未来につなぎ、美味しい日本のお米を安心して安定的に食べられる社会の実現につながると信じています。 安い/高いの議論で分断が深まるのではなく、双方の理解が深まり、より良い未来につなげていきたいですね。 -- 参考文献:日本学術会議の2001年11月1日の提言・報告「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について(答申)」

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更新日:10/06(09/29〜10/05集計)