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職人の爪が織りなす格調。綴織(つづれおり)の特徴

公開日:2025/01/08 更新日:2025/10/28

はじめに:綴織(つづれおり)とは

綴織(つづれおり)は、約四千年もの歴史を誇る伝統織物であり、日本には飛鳥時代に伝来したとされています。 この綴織は、職人が手足で織機を操作し、糸を一本一本手作業で織り込むため、機械式のジャガード織機で織られるものと比べ、格段に時間を要する稀少な技法です。 しかし、その手仕事の工程があるからこそ、製品ひとつひとつに独自の個性が宿り、シルクの重みを感じるふっくらとした上質な絹織物へと昇華します。 綴織の最大の特長である「爪掻き文様」を美しく織り出せるのも、この伝統的な手織り製法にこだわり続けている証です。 貴織は、この伝統技法を大切に守り、上質な絹糸を用い、手間と時間を惜しまない真摯なものづくりに取り組んでいます。 手織りゆえに生産数が極めて少なく、希少性の高い貴織の国産綴織は、店頭に並ぶ機会がほとんどございません。実際に見て触れていただける機会も限られておりますため、まずはその格調高い綴織の魅力を、特徴とともに簡単にご紹介いたします。

1. 綴織特有の技:爪掻き(つめかき)

ノコギリの刃のようにギザギザに刻んだ職人の爪先で、文様となる緯糸(よこいと)を一本一本掻きよせて織り描く技法を「爪掻き(つめかき)」と呼びます。

2. 「日に寸」に込められた価値

この技法は、「日に寸、五日に寸、十日に寸(ひにすん、いつかにすん、とおかにすん)」と伝えられるほど、時間と高度な熟練技術を必要とします。複雑な文様になると、熟練の職人でも一日にわずか1cmほどしか織り進められないものもあります。そのため、極めて生産数が少なく、希少価値の高い織物となっているのです。

3. 爪掻きの絵画的な製織工程

綴織は、織り手から見える面が文様の「裏面」となり、表面は下側になります。鏡像(きょうぞう)を織るのと同じ状態であるため、職人は織り上がる表面の仕上がりを常にイメージしながら、緻密な作業を進めます。 文様を織る際、計算された型紙や図案を用いるのではなく、あたかも白いキャンバスに絵を描くように作業を進めます。職人は、下絵と呼ばれる図案に代わる絵を見ながら、絵の具の色を混ぜ合わせるように多彩な絹糸を撚り合わせ、新たな色を創り出します。 そして、線を描き、濃淡や立体感を表現するために、「ハツリ(はつり)」や「ボカシ」といった爪掻き特有の高度な技法を駆使して、文様を織り描いていくのです。

4. 豊かな感性が生み出す唯一無二の文様

たとえ同じ下絵を用いたとしても、厳密には同じ文様が織り描かれることはありません。ひとつとして同じものはない、世界にひとつだけの作品として生まれるのです。 これを創り出すのは、高度な技術もさることながら、色や形を創造する豊かな感性がなければ成し得ないことです。それこそが、綴織が日本美術織物の最高峰といわれる所以でもあります。

5. ハツリ目(ハツリ孔)とは

ハツリ目とは、文様の部分と部分の間に生じる微細な隙間(スキマ)のことです。文様となる緯糸(よこいと)を、必要な箇所に必要な分だけ、爪で一本一本丁寧に織り込むことでこの隙間が生まれます。 この手織りの技法では、必要な部分にのみ糸を織り込むため、機械織り(ジャガード織機)の綴織とは異なり、織り幅全体(左右)に緯糸を通すことがありません。そのため、表も裏も全く同じ文様が美しく表れる、という大きな特徴を持っています。

6. ボカシとは

ボカシとは、文様の濃淡や立体感を表現するために、直線的ではないように左右異なる色の緯糸を交互に織り込む技法です。

7. 糸を通す道具「杼(ひ)」

「杼(ひ)」の内部には、絹糸(緯糸)を巻いた「管(くだ)」が納められています。 職人が足元にある「踏木(ふみぎ)」を踏み込むと、それに繋がれた「綜絖(そうこう)」が上下に動き、タテ糸が開口します。この開口部に「杼」を通すことで、横に糸が渡され、織りが進められます。
「杼」に糸を巻いた「管」をセットし、緯糸(よこいと)を織り込んでいきます。色を使う際は、その色の数だけ「杼」を用います。 私どもの綴織に用いる「杼」は、手のひらサイズの小さなものであり、人の手で扱いやすいよう工夫されています。そのため、糸を巻く「管」も小さく、巻ける糸の量も限られることから、一度に織れる長さはわずか数センチ分ほどです。 「管」の糸がなくなれば、次の「管」に取り替えて織り進めますが、その際に生じる糸のつなぎ目も、手織りならではの風合いとして残るのです。

8. 「綴」は西陣織12種類のひとつ

伝統的工芸品産業の振興に関する法律により指定されている西陣織は12種類あり、それぞれ工程や技法は異なり、1.綴 2.経錦 3.緯錦 4.緞子 5.朱珍 6.紹巴 7.風通 8.綟り織 9.本しぼ織 10.ビロード 11.絣織 12.紬 の12種類に分類されます。西陣爪掻本綴織は西陣織のひとつ「綴」に分類され、西陣織工業組合の登録商標です。