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「鍋料理」考

公開日:2026/01/16

正直毎日鍋でかまわない気がする

みなさまこんにちは。 北海道新鮮マルシェのサイトウでございます。 道路脇にそびえたつ雪の壁が身長をゆうに超えてまいりますと、いよいよ冬本番が到来したなと感じます。 ええ、もう。ここ最近は夜のうちに雪が大変に積もるものですから、出社前に車を掘り出すので一苦労というもので。 車の中で「今日は鍋が食べたいなあ」だなんて毎日のように考えております。 どんな鍋が食べたいかと申しますと…。きりたんぽですとか、水炊きですとか…、ああ、おでんも良いですね。単純に寄せ鍋とか、最近はスーパーにいろんな鍋の素が置いてありますから何か発掘するのも楽しそうです。しゃぶしゃぶも食べたいし、たらちりなんて食べられるなら最高でしょう。海鮮チゲとか、麻辣火鍋も温まりそう。洋風にポトフや、シチュー…。 あれ、シチューって鍋ですかね? 言われてみますと、『鍋料理』って何ですか?と聞かれて即答できないことに気が付きました。 ということで今回は『鍋料理』考と称しまして、鍋料理を深堀してまいりたいと思います。

「食卓=鍋」から鍋料理を食卓に持ち込む

そもそも「鍋」とは「肴瓮(なへ)」であったといいます。「肴(食材)」を「瓮(土器)」で煮たことから始まって、「堝(なべ)」となり、金属器が広まるにしたがって金偏の「鍋」に変遷していきました。 さて、かつての日本の家庭料理における調理場であったのが「囲炉裏」です。その多くは居間の中心に据えられて、鍋で煮炊きをしたり、串に刺した魚を焼いたり、その周りに人が集まって食事をしている、というのは想像に難くないかと思います。 つまり、かつての日本の家庭では鍋の周りに人が集まっていた。「鍋=食卓」の図式を描いていたといえましょう。 この「鍋=食卓」の家庭文化が大きく変化したのが江戸時代の町屋文化であると言います。 薪で煮炊きをするのにはどうしても煤やら煙やらが起きてしまいます。町家ではこれを嫌って台所を別につくり、食卓と鍋が引き離される形になりました。 では、食卓で全く火を用いなかったのかと言われればそうではありません。持ち運びのできる火床、「焜炉」が使われるようになったのです。 ➤焜炉 #とは  コンロとカタカナ表記されることが多いが漢語である。持ち運びのできる調理用の炉の事を指すが、現代では備え付けの場合にもそう呼ばれる。七輪は焜炉の一種。 ここからは現代を生きる我々にもなじみ深い光景であると思います。 鍋料理をするときにカセットコンロを持ち出すのと同じ。もっと小型のものですと。温泉旅館などで見かける卓上コンロなどでしょうか。 こういったコンロで調理・加熱する料理のことを、台所で用いる大鍋と区別して「小鍋膳立て/小鍋立て」といいました。これが現代でいう「鍋料理」に相当します。 こうして「食卓で鍋料理を囲む」生活が定着していったのだそうです。

鍋料理は3つに分類される:柳原式鍋分類

日本料理研究家である柳原 一成(1492-2022)は、日本における鍋料理を植物の分類法を真似て3つの属性に分けました。 これを『柳原式鍋物系統分類図』と言います。それを簡単にまとめたのが上記の画像です。 ひとつめの分類が、鉄鍋を用いて濃い味で仕立てる「すき鍋」。 その名前のとおり代表は「すき焼き」です。柳原式分類によれば、ぼたん鍋や桜鍋、狸汁などの野生動物を味噌仕立てで煮込んだ料理もこれに該当するようです。 おそらくですが、北海道名物のジンギスカン、特に「味付きジンギスカン」や「煮込みジンギスカン」はすき鍋に分類されるでしょう。鉄鍋を用いて、独特の濃い味のタレで煮込んで食べる形です。 ▼「すき鍋」を食べてみる
ふたつめの分類が、「煮汁鍋」です。味付けをした"つゆ"をつかって食材を煮込む方式の鍋で、土鍋やホーロー、ステンレスなど鍋の素材は化学変化の少ないものが向いています。 いわゆる鍋といえばこれになる場合が多いかと思います。全国各地で食べられている「寄せ鍋」や、「トマト鍋」「カレー鍋」「キムチ鍋」といった変わり種もこれに該当するでしょう。また、全国各地には「石狩鍋」や「きりたんぽ」「しょっつる」「ほうとう」といったご当地の煮汁鍋も多く存在します。 北海道であればやはり鮭を味噌味に仕立てた「石狩鍋」が有名でございます。また、北海道新鮮マルシェの本拠地である滝川市は合鴨の名産地でもあるため、地場産品をつかった鴨鍋も親しまれています。 そのほか海産物をつかった鍋料理としては、高級魚「きんき」をつかった「キンキ鍋」も外せません。 ▼北海道の「煮汁鍋」を試してみる
みっつめの分類が、出汁などを使わずに水で食材を煮る「水鍋」です。あとからポン酢や漬けダレ、薬味をつけて食べるのも特徴ですね。 柳原によれば味付けの失敗が少なく初心者向けの鍋であるとか。 代表例としては、「しゃぶしゃぶ」や「水炊き」。 「たらちり」「てっちり」などは、水鍋のなかでも「ちり属」と呼ばれています。"ちり"と面白い響きなのは、火を通すことで魚の身が『ちりちり』と縮むことに由来するとか。魚を用いた水鍋の事を指すのかと思いきや、柳原式分類によれば湯豆腐もこれに当たるそうで、奥が深いです。 ▼北海道らしいしゃぶしゃぶを試してみる

疑問:『鍋料理』と『煮込み料理』の境界は

さて、ここで当初の疑問に立ち戻りましょう。 Q.『鍋料理』って何ですか? A.食卓に焜炉を持ち出して煮炊きする料理  と、一定の解答を得ることができました。 ではコチラはどうでしょうか Q.『シチュー』って『鍋料理』? A.鍋料理じゃない、はず… シチューを食べるときに食卓にカセットコンロを持ち出してぐつぐつ言わせながら食べるか?と言われれば鍋料理ではないでしょう。 よって、シチューもカレーもポトフも鍋料理ではありません。 「stew(煮込む)」や「pot-au-feu(鍋を火にかける)」を語源とするように『煮込み料理』というのが正しいように思います。 ところで、みなさまはポトフのフランス語版ウィキペディアに日本版ポトフとして紹介されている料理があることをご存知でしょうか? それはズバリ「おでん」でございます。出汁(ブイヨン)を用いて弱火でじっくり煮込んだ料理であるためだそうで。 「おでん」が「ポトフ」であるのならば、「ポトフ」は「鍋料理」でしょうか? どうもここに『鍋料理』と『煮込み料理』の境界線があるように感じます

おでんは火にかけるか否か

実はサイトウの最初の疑問もここにありました。 だって、サイトウ家ではおでんを食べるときに鍋を火にかけないんです。ずっとストーブの上で煮込んでいた鍋を、食卓の鍋敷きの上に置いて囲みます。ずっと火にかけている鍋からおでんを取り出して…と、いうのはお店でしか見たことがなかったのです。 みなさまのご家庭ではどうでしょうか?調べてみたところですと、火にかけたりかけなかったり結構分かれているのではないかと思います。 疑問に思いました。 果たして、これは『鍋料理』か否か…? 「おでん」って『煮込み料理』じゃないの…?と。
結論を申しますと、「おでん」は『鍋料理』でも『煮込み料理』でもある、ということです。 ベン図に表すと上の通り。 混乱の原因は『鍋料理』と『煮込み料理』の分類方法が『食べ方』と『調理法』で全く異なっていたことにあります。 おでんはコンロで火にかけながら食べるため『鍋料理』かつ、長時間煮込むため『煮込み料理』である、ということですね。 つまり、「ポトフ」も「シチュー」も「カレー」も火にかけながら食卓で鍋を囲めば『鍋料理』になるということでしょう。 反対に「すきやき」や「しゃぶしゃぶ」は長時間煮込むことがないので『煮込み料理』に分類されることは無いわけです。

あー、すっきりした ポトフ食べたい

サイトウ、疑問が解消されてとてもスッキリしております。 今回、鍋料理の歴史に関しましては紀文HPの『紀文アカデミー鍋教室:鍋の歴史と分類』をかなり参考にさせていただきました。 みなさまも、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。 サイトウは非常にポトフが食べたくなってしまいましたので作ってこようかと思います。良いベーコンを使ってやりますよ…! ▼ポトフにベーコンとソーセージも入れちゃう