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特集|絶えず、糸の声に耳を傾ける職人さんがいます -boussole-

公開日:2024/12/18 更新日:2026/10/07
  • ■秋田の空気で、糸を紡ぐ

    ────── やわらかいのは、カシミヤが入っているから けれど、それだけでは、このニットの心地良さを、すべて説明することはできません ・身体を包む、ふっくらとした軽さ ・ゆったりを大きく見せない落ち感と編み地の構成力 ・何年も着続けられる頼もしさ その理由をたどっていくと、ニットを編み立てる工程より、もっと前へと行き着きます ホワイトカシミヤと メリノ種ファインラムズウール このふたつの原料が出会い、一本の糸になるまでには、秋田の工場で受け継がれてきた技術と、何度も原毛に触れ、その日の状態を見極める、職人の目と手がありました ウールは天然繊維でありながら、化学繊維には真似できない様々な特徴を備えた、機能素材ともいわれています その保温性、吸放湿性などの高い機能は、自然の力から羊を守るために、長い年月をかけて進化して備わったものです 改めて、このニットがどこから来たのかを お伝えしたいと思います ──────
  • ■ なぜ、カシミヤ100%ではないのか

    ────── 上質なニットを作るなら、カシミヤ100%が最適 そう思われるかもしれません けれど、ブソルが作りたかったのは 特別な日にだけ着るニットではありませんでした 肌寒い日、つい手が伸びる 仕事にも、旅にも いつもの買い物にも気兼ねなく着ていける 目指したのは、きちんと上質でありながら 日常の中で選ばれ続けるニット ホワイトカシミヤがもたらすのは 肌に触れた時のなめらかさと ぬくもりを蓄える、細くやわらかな毛質 そこへ合わせたのがウール。 単純にウールと言っても、様々な種類がありますが このニットに使用されているのは 「メリノ種のファインラムズウール」です メリノ種は 羊毛の中でも繊維が細く、なめらかで、伸縮性に富んだ毛質 さらにラムズウールは 生後6か月以内の仔羊から採れる 一度も刈られていない、やわらかな毛です 細かな縮れの間に空気を含み ふっくらとした弾力を生み出します === カシミヤが、やわらかな風合いを与え ファインラムズウールが、そのやわらかさを支える === このふたつを混ぜることで ただ軽く、やさしいだけではない 身体の線を拾いすぎず、コクーンの曲線を美しく保つ しなやかな強さが生まれます 毎日着たくなる心地良さを目指した結果が この組み合わせでした ──────

    ■ 秋田の空気で、糸を紡ぐ

    ────── この糸を作っているのは 秋田にある工場です 手紡ぎに近いレベルで、ふっくらとした紡毛糸を作る 日本でも数少ない紡績メーカー === 紡績から撚糸、出荷までを ひとつの自社工場で一貫して行っているのは 日本で、ここだけ === 紡毛糸は 繊維を強く引き揃えすぎず、撚りを甘くかけることで、糸の中にたっぷりの空気を抱え込みます その空気が、ニットを軽くし、外の冷たい空気を遮りながら、身体のぬくもりを守ります 袖を通した時に感じる、ふわっと身体を包む感覚は、仕上げによって、表面だけをやわらかくしたものではありません 一本の糸の内側にまで 空気を含ませているからこそ生まれる やわらかさなのです ────── .
  • ■ 一本の糸になるまで

    ────── ホワイトカシミヤと ファインラムズウールは 最初から一本の糸として、工場へ届くわけではありません はじめは、綿のようにふわふわとした原毛の状態です まず行われるのが、調合。 異なる性質を持つ原毛を、むらなく混ぜ合わせながら、固まった繊維をほぐし、たっぷりと空気を含ませます 次は、カード。 原毛をさらに細かくほぐし、繊維を一本ずつ分けながら、不純物や極端に短い繊維を取り除き、薄いシート状に整えていきます そして、ミュール紡績。 やわらかな繊維の束を、ゆっくりと引き伸ばしながら撚りをかけ、強さと伸縮性を持った一本の糸へと変えていきます 出来上がった糸は、機械で均一に巻き直され、規格から外れる部分や異物を取り除きながら、結び目を残さないように、空気でつながれます 最後は、撚糸。 複数の糸を撚り合わせ、太さや強度を整えながら、このニットに必要なふくらみと軽さを引き出します 混ぜる ほぐす 揃える 伸ばす 撚る その一つひとつを、別々の場所へ渡すのではなく ひとつの工場で、同じ職人たちが見届けています 原毛の頃から、一本の糸として送り出されるまで 絶えず人の目が届いている だからこそ、毎年変わらない品質で このニットを作り続けることができるのです ──────
  • ■ 手紡ぎのような糸を作るということ

    ────── 均一であることだけを求めるなら もっと速く、効率良く作る方法があります 私たちが尋ねてきたニット工場も、例外なく「均一・効率重視」でしたので、複雑な編み地や、時間をかけないと編むことができないパターンは、そもそも受け付けない、という姿勢でした。 けれど、この秋田の工場が大切にしているのは 手紡ぎの糸が持つようなふくらみと、やわらかな毛羽立ちです 効率重視では生まれない 少しずつ空気を含ませるように 強く撚りすぎない繊細な加減 原料の状態に合わせて 機械の動きを見守る、職人の感覚 ニットに触れた時「なんだか気持ち良い」 そう感じる理由は、目に見える表面だけにあるのではなく 『日本製』という言葉が示しているのは 作られた場所だけではありません 「安定して良い糸を作りたい」という職人の思い。 原料の性質を知り その日の状態を見ながら次の工程へ渡していく その一着の背景に最後まで人の目が届いていること それが、この糸の 揺るがない価値だと思っています ────── .
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