EVにおけるテスラのように、どのような製品/ジャンルにも彗星のごとく現れるブランドが存在する。後年振り返っての検証は必要だが、小型プロジェクターにおいては「ETOE」が該当することになるかもしれない。
ETOEと書いて「エトエ」と読ませるこのブランド、創業時からプロジェクターひと筋。創業者にしてCEOの李氏はプロジェクターを専門とするエンジニアで、過去には世界的に著名なプロジェクターブランドで開発を主導した人物である。
その後彼は独立しETOEを設立、Android TV搭載の1LCDプロジェクターを発売。さらに翌年には、Google TVの公式認証が認められた5ブランドのうちの1社となる快挙を遂げた。日本には2024年に上陸、以降ECサイト(楽天)での販売を中心に評価を得つつ、販売網と製品ラインナップの拡充を図っている。
先般、そのETOEからフルHDプロジェクター「Dolphin 2」が登場、VGP初エントリーにして受賞と相成った。その画と音のクオリティと使い勝手を、早速レビューしてみよう。
日亜化学工業の3色レーザーモジュールを採用。従来の単色レーザーやLEDに比べて、純度の高い色表現が可能なほか、広色域化も実現。
プロジェクターは大きく「表示デバイス」と「光源」の2つを基準に分類でき、何を採用するかで画質や性格が大きく変わってくる。Dolphin 2の場合、表示デバイスは「DLP」で光源は「レーザー」だ。
DLP方式を採用する最大のメリットは、小型・軽量ボディでも高コントラストの映像を得やすいことだ。光を反射しないため黒の沈み込みに優れ、画素間の隙間が狭いため粒状感が出にくいという特性もある。
反面、DLP方式には虹色のチラつき(カラーブレーキング)が発生しやすい問題があるが、Dolphin 2が光源に採用した「3色(RGB)レーザー」はその有効な対処策となる。この3色レーザーは鮮やかさと輝度、コントラストに優れるだけでなく、単色レーザーとカラーホイールの組み合わせより格段にカラーブレーキングを抑えられるのだ。輝度は800ルーメン(ANSI)、BT.2020を110%達成と色域も広く、真っ向「画で勝負」を挑んでいる。
スタンドは折り畳み式で、本体底部に格納されている。斜め下から上まで、無段階の角度調整が可能。
プロジェクターと付属のリモコン、USB Type-Cケーブル、PDアダプター(もしくはモバイルバッテリー)を持ち歩けるキャリングケースが同梱される。
一般的な6畳の短辺の長さ(2.5m)を投写距離とし、約93型の画面サイズで検証。
暗室でDolphin 2の電源を入れると、スクリーンに初期画面が表示される。準備は基本的にこれだけ、あとは搭載されたTOFセンサーの働きで自動台形補正やオートフォーカスなど設定作業をすませてくれる。
オートフォーカスの精度は高く微調整はほぼ不要、しっかりピントを合わせてくれるのはうれしい。800ルーメンという輝度も、控えめな照明であればじゅうぶん明るく感じるから、ビジネスでも活用できそう。
投写角度を調整する板状のスタンドは、なかなかのアイデアだ。無段階調整できるから天井方向へ向けて設置できるし(垂直方向への投写には対応しない)、使わないときは底面に格納できるから邪魔にならない。ものの数分で準備完了、いよいよ映像をチェックする。
肝心の映像は、DLPらしいコントラストの高さと色域の広さが圧巻だ。YouTubeで『Uzbekistan 8K HDR 60p』を再生すると、解像度の高さに軽く驚く。
フルHDのはずなのに、オートフォーカスの精度の高さかピントがしっかり合っているからか、細部まで緻密な印象だ。赤はややビビッド傾向が強いものの、色域の広さとコントラスト感も手伝って全体の調和がとれている。
映像モード(写真の画像モード)は「標準」「鮮明」「映画」「ゲーム」「カスタム」を用意。HDR信号の入力も反映される仕様。今回はすべて映画モードでチェックした。
入力を4K UltraHDブルーレイに切り替え『トップガン マーヴェリック』のチャプター2を再生すると、見慣れたシーンであるだけに、忠実度の高い描写であることがわかる。
解像感もさることながら、バイクの質感、空のグラデーション、離陸時のジェットと暗闇のコントラスト。レーザー光源らしい鮮やかでキレのある画だ。
倉庫のシーンでは、音場を広げる音響効果があることも確認できた。この小さい筐体に内蔵のスピーカーでこの音量・音場感であれば、及第点と言っていいだろう。
音声モード(写真のサウンドスタイル)は「標準」「映画」「音楽」「スポーツ」を用意。
Prime Videoでアニメ作品『葬送のフリーレン』を見ると、夜のシーンでは背景の木々も黒潰れすることなく描けているし、眩い光が飛び交う戦闘シーンでも白飛びはない。
DLPの難敵・カラーブレーキングも、完全排除とまでは言えないもののかなり抑えられている。アニメならではのフラットな着彩もムラなく描き、このプロジェクターの完成度の高さを実感した。
基本的な自動補正機能を網羅しており、設置性は良好。
初めて接するブランドのプロジェクターは、必ずと言っていいほどどこかに気になる点を見つけるものだが、このDolphin 2には隙らしい隙がない。新興ブランドといっても、裏で支える開発者の経験値次第だ。
映像は3色レーザーの勘所をわきまえているのか、発色が鮮やかなだけでなく的確で、画全体の調和が取れている。
カラーブレーキングもあまり気にならず、黒の再現性とコントラストの高さというDLP方式の “いいとこ取り” をさらりと実現している。音響は10Wなりの音圧だが、筐体サイズを考えれば完成度は高い。
設置性はかなりハイレベル。適当に置くだけでピントあわせや台形補正を済ませてくれるというだけでなく、微調整がほぼ必要ないくらい適切に設定される。付属の板状スタンドは合理的な設計で扱いやすく、キャリングケースが付属することもうれしい。
プロジェクターは小型化と高機能化が進み、「ここぞというとき使う映像機器」から「日々活用する映像機器」へと進化した。Dolphin 2はその先端を行く製品であり、ともに過ごしたくなる魅力があるといえるだろう。
●投写形式:DLP ●投写デバイス:0.23型DMD ●表示解像度:フルHD(1920×1080) ●レンズ:デジタルズーム/電動フォーカスレンズ ●光源:3色(RGB)レーザー ●投写サイズ:20- 120型 ●明るさ:8,000ルーメン ●騒音:30dB ●スピーカー:2chステレオ(5W×2)●ワイヤレス機能:Bluetooth Ver 5.1、Wi-Fi(5GHz/2.4GHz) ●主な入出力端子:HDMI(ARC)×1、USB Type-C×1(電源入力用)、USB Type-A×1、ステレオミニ出力×1 他 ●消費電力:100W ●外形寸法:約185W×58H×179Dmm ●質量:約1.2kg