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猫を背負った便利屋さん(四)

公開日:2025/10/16 更新日:2025/10/16

第四章:消えたインコと、過去の唄

依頼主は、公園の近くの古びたアパートに住む、遠藤という名の老紳士だった。玄関先で浩介を迎える彼の目は、どこかぼんやりと霞んでいた。 「あの…インコが、いなくなってしまってね」遠藤老人はゆっくりと言葉を紡ぐ。「“ピーちゃん”というんだ。緑色の、小さなインコだ」 認知症の気があるらしい。話は少しずれ、同じことを何度も繰り返した。 「わかりました。探してみましょう」 浩介はオレンジのリュックを手提げモードにし、アパートの周囲を歩き回った。クロを連れて来たのは、鋭い動物の嗅覚と聴覚が役立つかもしれないと思ったからだ。メッシュの窓からは、クロが興味深そうに周囲の音に耳を傾ける様子が見えた。鮮やかなオレンジ色が、薄暗いアパートの廊下でひときわ目立ち、近所の人の視線を少し集めていた。 「ピーちゃん!」「ピーちゃん!」 呼び声が響く。しかし、返事はない。 しばらくして、浩介はアパートの裏庭にある大きな銀杏の木の下で、ほんの少しの緑の羽根を見つけた。それと同時に、リュックの中のクロが落ち着きをなくし、メッシュに爪を引っ掛けるような仕草を見せた。 「…ここにいるのか?」 浩介は首をかしげた。木の上には見当たらない。 すると、遠藤老人がゆっくりと歩み寄り、木の根元にある古い物置のドアを指さした。 「…あそこ。ピーちゃんは、あそこが好きだった」 浩介が錆びたドアを開けると、ほこりっぽい物置の中から、カサコソという音とともに、緑の小さな影が飛び出してきた。それは老人の肩にぴたりと止まり、「ピーちゃん!バカ!」と大声で鳴いた。 遠藤老人の曇った目が、一瞬、はっきりと輝いた。 「…そうだ。お前は、いつもそうやって僕を呼んでいたな」 老人は涙を浮かべて笑った。インコは、彼が忘れかけていた妻の口癖を、ずっと覚えていたのだ。 帰り道、浩介はオレンジのリュックを背負い、静かな住宅街を歩いた。事件は解決した。リュックの明るい色が、老人との少し切ない別れを、温もりで包んでいるように感じた。 しかし、柴田の言葉と、白石の依頼が頭をよぎる。 「クロ」浩介は呟く。「お前は…あのインコみたいに、何かを伝えに来たのか?」 リュックの中から、满足そうな、しかし何かを考えているような、小さな鳴き声が返ってきた。

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