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猫を背負った便利屋さん(三)

公開日:2025/10/16

第三章:公園の老刑事と、危険な匂い

電話の主は、昨日の騒音調査の依頼主だった。細かい確認事項で、すぐに話は終わった。浩介はほっと息をつく。白石からの連絡ではないらしい。 翌日、曇り空の下、浩介はクロを連れて中央公園に向かった。広い芝生の端にあるベンチに座り、クロのためにリュックの背面テントを拡張してやる。緑の芝生に、オレンジ色が鮮やかに映えている。 「やあ、君のかいね?」 隣のベンチに座っていた、年配の男性が声をかけてきた。少し腰の曲がった、しかし眼光の鋭い男性だ。その視線は、浩介のオレンジのリュックを一瞥していた。 「そうです」 「ずいぶん目を引く色のリュックだな。両側のメッシュが大きくて、風通しも良さそうだ」 「ええ。彼が落ち着くようです」 浩介はそっけなく答えたが、男性はそれに構わず、クロをじっと観察している。 「…黒猫か。珍しい色ではないが、なかなか良い風格だ」 「ありがとうございます」 会話が途切れ、少し間が空いた。
「昔、少しばかり警察の仕事をしていたものだ」男性は突然言った。「柴田という。今は退職して、のんびりと公園で野良猫に餌をやっているんだがね」 浩介はわずかに緊張した。警察官——たとえ元警官であっても、彼の過去には触れてほしくない話題があった。 「そうでしたか」 「そうだ。で、その子だ」柴田は顎でリュックの中のクロを指した。「随分と利口そうな目をしている。ただものじゃないな、という感じがする。それに、このオレンジ色、遠くからでもすぐわかるな。」 浩介の背筋が凍った。何を意味しているのだろう? 監視されているということか? 「…普通の猫です」 「ふむ。まあ、いいだろう」柴田はにこりと笑い、立ち上がった。「これからも、その子を大事にな。最近、変な連中が猫を狙っているという話も聞くからな。目立つ色は、時に危険を呼ぶこともあるが、逆に、誰の目にも触れているという安心感にもなる。」 柴田は去っていった。浩介はその言葉が頭から離れなかった。 「変な連中」——それは白石の警告と関係があるのか? 浩介はリュックを前抱きモードに組み替え、クロをしっかりと抱いた。胸と腰で固定するストラップが、何かから守っているような、そんな感覚を覚えた。オレンジ色が、一種の警告色のようにも、あるいは護符のようにも感じられた。 クロはメッシュ越しに外を見つめ、金色の瞳を細めていた。何かを知っているかのように。

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