① 初期(1980年代末〜1990年代)
この頃のコンピュータは、U.S. Navy Tables や初期のBühlmann(ZH-L12/16)、DSAT(PADIのRDP)などの減圧テーブルをそのまま内蔵しているようなものでした。
潜水ごとに「残り潜水可能時間(NDL)」をリアルタイムで計算するのが主な機能で、減圧停止は単純な計算か、そもそも対応していない機種も多くありました。モデル自体はマルチコンパートメント方式で体内の窒素の出入りを複数半減期で管理していましたが、安全係数は固定で、急な深度変化や複雑な潜水には十分対応できませんでした。基本的には、テーブル潜水をデジタルで置き換えたイメージです。
② 中期(2000年前後)
Suuntoが採用したRGBM(Reduced Gradient Bubble Model)の登場により、マイクロバブルの挙動を考慮したより保守的な計算が可能に。急浮上や短い水面休息をした際の安全マージンが強化され、マルチレベルダイブや繰り返し潜水にも対応しやすくなりました。また、Bühlmannモデルの改良により、ナイトロックスなど複数ガスの切り替えができる機種も増加。安全性と汎用性が向上し、レクリエーショナルだけでなく軽テクニカルにも対応できる機器が普及しました。
③ 現在(2020年代)
最新モデルでは、Bühlmann ZH-L16CにGradient Factors(GF)を組み合わせ、減圧の安全度を細かく調整できます。保守的な設定から攻めた設定まで、ダイバー自身の体力や潜水スタイルに合わせた選択が可能です。さらに、AI(送信機)との連携でタンク圧や呼吸量をリアルタイムで反映し、実際の体内ガス動態により近い計算を実現。Suunto Fused RGBM 2など、バブルモデルと溶解モデルを組み合わせたハイブリッド型も主流になっています。CCRやトライミックスなどにも対応し、現代のコンピュータはダイバー一人ひとりの潜水プロファイルに応じた動的な減圧計算ができるまでに進化しています。
昔と今の4つの違い
① 複雑な潜水への対応力が向上
30年前のコンピュータは単純なNDL計算が主流で、深度を上下するマルチレベルダイブでは過剰に短いNDLを表示したり、想定外の挙動をすることもありました。現代機では複雑な潜水プロファイルにも正確に対応できます。
② リピティティブダイブへの精度向上
初期機種ではテーブルの補正程度だった連日潜水も、現在は組織内の残留窒素を多段階で追跡し、安全マージンを精密に計算できるようになりました。
③ 急浮上・短い水面休息を自動補正
昔は完全にダイバーの判断任せでしたが、今はマイクロバブルの蓄積を考慮して翌ダイブのNDLを短縮するなど、安全側に自動補正してくれます。
④ テクニカルダイブにも対応
複数ガス、減圧ステージ、GF設定など、テクニカル用途にも対応できる精度と柔軟性を備えています。